vol.13 2011年12月25日(日)
私は、「企業の人材育成は経営に役立つべき(資するべき)」と強く考えています。
http://www.kkkiduki.jp/article/14030753.html
経営のあり方・やり方は組織によって様々です。
本コラムでは、経営に関する入交昭一郎氏(旭テック会長)のお考えから私が再確認さ
せていただいたこと、興味を覚えたこと、そして検証したいと思ったことを、また入交氏の
インタビュー記事をご紹介します。
【私が再確認したこと・興味を覚えたこと・検証したいと思ったこと】
★普通の技術、コモディティは日本では成り立たなくなる。
★新興国の市場を取りに行くしかない。TPPへの参加は当然。
★デジタル化は脅威。しかし、デジタル化が困難&高品質であれば勝負できる。
★日本の製造業は世界各地に根を下ろし世界中からおカネを日本に集める装置になれ
ばよい。
★日本の製造業の選択肢は五つある。どれもやさしくないが、どれか一つに決めないと。
★国内でもの作りに携わる人、一人一人の質を高めないといけない。そのためには、徒
弟制度でたたき上げていくしかない。一番の心配は、若い人たちのマインドである。
★日本の強みは、細部にこだわり、現場ですりあわせて、ボトムアップで出来栄えのいい
製品にすること。日本は、細部にこだわって頑張るしかない。
★部品で細かく稼ぐ。
★名を取らずに実をとる。アップルを目指さないのが日本の製造業の生きる道。
★トップは決断においてリスクを取ることも必要。
★川の水は、結局、海に流れ込む。そういう大きな流れを見ていればいい。
【入交昭一郎(2011/12/24)「製造業から見た日本と世界」日本経済新聞】
(聞き手・尾沢智史、畑川剛毅)
※「です・ます」調を「である」調にするなど一部修正させていただきました。
●日本は市場として縮小し、利益を上げることが非常に難しくなっている。
●加えて、新興国との競争がある。原材料、人件費、土地、電力、工場建屋、製造設備、
新興国の方が圧倒的に安い。国内で作るものは品質で差をつけるしかないが、追い上げ
は急である。普通の技術で、汎用品(コモディティ)に近いものは日本では作っていけなく
なる。
●デジタル化の影響は大きい。高精度で加工する場合、昔は工作機械と腕の立つ職人が必
要だった。ところが、コンピューター数値制御の工作機械が導入されると、名人でなくとも
よくなる。設計ソフトを使うと大学を出たばかりの人間でも設計できる。
●鋳物のようにデジタル化しにくいものもある。温度、湿気、砂の粘土など何百というファク
ターが絡み合っているので数値ができない。テクノメタル(旭テック子会社)は鉄鋳物でも
一番難しいディーゼルエンジンのシリンダーブロックを作っている。不良率が低く、値段は
高いけれど、不良品を捨てるコストを考えればはるかに安上がりだということで、どんどん
海外からの受注が増えている。
●米国や欧州でも先進国の市場は自国産業にとって収益源になりにくくなっている。しかも、
常に海外との競争にさらされる。だから新興国の市場を取りに行くしかない。その意味で
もTPP(環太平洋経済連携協定)への参加は当然だと思う。
●生産している場所が重要なのか、それをコントロールしている場所が重要なのか。
●海外で車を作るホンダやトヨタも「日本の製造業」である。海外で生産した製品を海外の市
場に売って、その利益を日本に持ってくる。国内の生産が厳しくなっても、日本の製造業が
世界各地に根を下ろして頑張れば、世界中からおカネが集まってくる。企業は、その装置
になればよい。
●21世紀の日本人は工場も働き手も海外に出て出稼ぎすべき。
●日本の製造業は五つの選択肢のどれかを選らばなければならない。どれもやさしいこと
ではないが。
1.ある分野に特化して、国内で徹底的にお客さんに奉仕して今ある顧客を離さない。
京都のお茶屋さんのような堅実なビジネス。
2.国内で狭い分野に特化すると同時に高い技術力でグローバルな競争力を持つ。小金
井精機という会社が典型で、F1のエンジンの特殊な部品を超高精度で仕上げる技術
がある。
3.一番典型的なもの。国内に製造拠点は残しながら、培った技術を持って海外へ出て
いく。旭テックはこれである。
4.国内はマーケティングや開発に特化し、生産はすべて海外でやる。ユニクロのように。
5.世界のどこにもない新しいものを作りだす。これは天才が出てこないとできない。
●国内でもの作りに携わる人は減る。だから、一人一人の質を高めないといけない。
●そのためには、徒弟制度でたたき上げていくしかないのですが、いまの日本の若い人は
怒られたことがないし、あまり海外に行くことを好まない。一番の心配は、若い人たちの
マインドである。
●最後に残る日本の強みは、細部にこだわり、現場ですりあわせて、ボトムアップで出来栄
えのいい製品にすること。細部を練って積み上げていく力は断然強い。
●でもこれは同時に欠点でもあって、すぐに細部に目が行くので全体を構想できない。部品
点数10満点までのものを作るのは得意でも、スペースシャトルのような巨大なシステムを
作るのは向いていない。
●欧米の人間は、まずコンセプトから考える。大枠を決め、細部に下していく。アップルはそ
の典型で、iPHONEやiPADのように、まずコンセプトありきで製品を作っていく。
●日本は、細部にこだわって頑張るしかない。部品で細かく稼いでいく。航空機でいえば、
ボーイングやエアバスにはなれなくても、中小規模のシステムや大きなシステムの中の部
品づくりなら日本は世界最強である。そこに特化する。名を取らずに実をとる。アップルを
目指さないのが日本の製造業の生きる道です。
●心配なのはトップの決断力である。思いきった投資がなかなかできない。
●日本企業は、バブル崩壊で苦しい状況を経験しすぎて、いかにリスクを減らすかが最優
先課題になってしまった。リスクを取ることも必要。
●川の水は途中で渦を巻いたりしていて、ちょっと見ると元に戻るように見えるけれど、結局、
海に流れ込む。そういう大きな流れを見ていればいい(孫正義氏の言葉)。
●今は苦境の国々も、これから苦境に入る国々も、人はみな豊かさや安定を求めて必ず立
ち直る。日本もそうだった。そこを見失わないで仕事を続けていくことが、企業人にとって
一番、大切なことだと思う。