TOP

Vol.32  2012年4月30日(月)
 
「この先どうなるか分から者に娘をやるわけにはいかない」。13年前、妻の実家で、お父さん(妻の実父)から言われました。当時私は、勤めていたコカ・コーラウェストジャパン(※)を数カ月後に退職することを、また退職後は、生産性本部が開催している経営コンサルタント養成講座(※)を受講することを決めていました。
 
※コカ・コーラウェストジャパン
   http://www.ccwest.co.jp/
 ※経営コンサルタント養成講座

   http://consul.jpc-net.jp/mc/kouza/index.html
 経営コンサルタント養成講座を受講した後、つまり一年後に
何をするか?何ができるか?何をしたいのか?何をやるべきか?はたして稼げるのか(妻子に不自由なく生活してもらえるか)?
 今思い起こせば冷や汗ものなのですが、当時は、さしたる根拠も、確信もないにもかかわらず「どうにかなる!」
楽観していたように思います。


 
「この先どうなるか分から者に娘をやるわけにはいかない」。
 お父さんの言い分はもっともです。
  ・ 
  ・
  ・

 ずっと黙っていたお母さん(妻の実母)が、口を開きました。
 「お父さん、(耕二さんの人生は)楽しそうじゃないの」
 「お父さん、お父さんの人生、楽しかった?お父さんと(私と)の人生は楽しかった?」
  ・
  ・
  ・
 「苦労ばっかりだった・・・」
  ・
  ・
  ・

 「楽しくなかった・・・」
  ・
  ・
  ・

 「(耕二さんと妻の人生は)楽しそうじゃない!」
 
 ・
  ・
  ・
 
お父さんの(そして私の)思考はストップし、発する言葉を見つけることができません。
 お父さんは(私も)、理性的です。
 お母さんは、直感的です。

 「直感」と「理性」の二つのツール(シーナ・アイエンガー)。
 子供(私の妻)の結婚について、お父さんとお母さんの二人は、お父さんは「理性」というツールを、お母さんは
直感」というツールを、二人で異なるツールをバランスよく活かして、意思決定していただきました。


 
この10年、私は「理性」で考え抜き最後は「直感」で、あるいは「直感」を起点に「理性」で徹底に検証して結局最後は「直感」で重大事について決めてきました。お母さんから直感の凄さと理性の限界を突き付けられたこの時
の経験に私はもしかするととてつもなく大きな影響を受けているのかもしれません。


 お母さんのおかげで、私は妻と一緒になることをお父さんから許されました。
 お母さんには一生頭が上がりません。

 時々、あの時の情景を思い起こし、お父さんには申し訳なく思います。

 5日前、お父さんは他界しました。
病に伏しているお母さんを病院へ見舞いに行く途中の交通事故でした。
 妻はお父さんの遺品を整理しながらお父さんのズボンのすそがテープで留めてある状態を見て涙していました。 

 合掌

Vol.31  2012年3月6日(火)

 映画「ヒューゴの不思議な発明」の主人公ヒューゴ・カブレ(エイサ・バターフィールド)と私の子供の年齢はほぼ
同じです。映画を見ながら、ヒューゴが私の子供と重なりました。 ヒューゴが危機に遭遇するたびに、心配で心配
でしかたありません。
心臓の鼓動が聞こえてくるようです。ヒューゴの姿からけなげさを(敏感に)感じます。泣くよう
な場面ではないのに何度も泣きました。
 十数年前子供が生まれて、私は(生まれて初めて)「”ずっと”まじめに働こう」と
意を固めました。はじめて人生の戦略を考えました。いろいろな点、意味で、覚悟が固まり、少しは強くなったように思います。
 映画「ヒューゴの不思議な発明」を見ながらあらためて思いました。 「子供は私を強くしてくた」。
 同時に、子供は私を過度な心配症に、悲観的な人間に、したようです。日本について、その将来の不透明感や
不安を感じつつ、子供の健康や行く末な
どを考えると、子供のことが心配で心配でならなくなる時があります。
 子供は私を弱い人間にもしたのです。
 そういえば、母は弱かった・・・。
母はいつも私のことを心配していました。母が弱かったのは、私(子供)がいたからではないか・・・そんなことをふと思います。

 東大を退職した社会学者上野千鶴子さんが特別(最終)講義。「超高齢化社会が
来てよかったと思っている。かつて強者であった人も、最後には誰かに支えてもらわないと自分の生を全うできない。強者も、自分が弱者になる可能性を想像しなければならない社会だから」
  天声人語(2011/7/31)朝日新聞より

 小学生の子供も、年老いた父も、昨年春急逝した母も、今が絶好のタイミングと、人の弱さ脆さ(フラジャイル)
を私に教えてくれているのでしょう。
弱さ、脆さの学習は、私にとって、48歳という”今”の発達課題であり、この発
 課題を乗り越えると、次の新たなステージに上がれる、進めるような気もしています。

経営、マネジメントの任を担う方は、総じて、比較的に、強者です。経営、マネジメントの任を担う、強者の方は、
ともにこの世の中を構成している弱者の視点・立場・気持ちを、人生のある時点で学習することが、自身の
リーダーシップ力マネジメント力の幅を広め、奥行きを深める上で、有益ではないかと私は思います。

脆い
①こわれやすい。くだけやすい。「―・い刃」「―・くも初戦で敗れた」
②感じやすく、すぐ心を動かされるたちである。「情に―・い人」

[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

スタッフ
 監督・製作:マーティン・スコセッシ
 原作「ユゴーの不思議な発明」:ブライアン・セルズニック

キャスト
 ヒューゴ・カブレ:エイサ・バターフィールド
 イザベル:クロエ・グレース・モレッツ
 パパ・ジョルジュ/ジョルジュ・メリエス:ベン・キングズレー
 鉄道公安官:サシャ・バロン・コーエン
 ママ・ジャンヌ:ヘレン・マックロリー
 ヒューゴの父:ジュード・ロウ

Vol.30  2012年3月4日(日)

 母を亡くし、そして父も亡くし、酔いどれのおじと駅の時計台で暮らすヒューゴにとっ
の生きる糧は、父が生前心ときめかせた、精巧な、壊れた機械人形です。

 いえ、ヒューゴの生きる糧は、壊れた機械人形(というモノ)ではなく、その壊れた機
人形を”修理する”という行為です。

 修理という行為にヒューゴは没頭しました。修理という行為に没頭することによって、
ヒューゴは一時の間、日々の無力感ややりきれなさ、寂しさをから遠ざかることができ
たのではないでしょうか。没頭がヒューゴのモチベーションの崩壊食い止めたのでは
ないでしょうか。

 ヒューゴの没頭ぶりを見ながら、フロー経験について考えていました。

 フロー経験 flow experience :楽しさの一側面であり、ある行為に全人的に没入して
る時に感じる包括的感覚のこと。熱中している時に感じる状態の感覚チクセントミハ
(Csikszentmihalyi)の内発的動機づけ研究において提唱された用語であり、その特性
して、行為と意識の融合注意の集中自我の喪失環境を支配している感情自己目
などが上げられる。スポーツ、ゲームなどの内発的動機づけに基づいた行動の中で
経験されることが多い。
 中島義明他(編)(1999)『心理学辞典』有斐閣pp.764

 フロー経験(flow experience)には、次の特徴がある。(1)行為と意識の融合、(2)
された刺激領域への注意の集中、(3)自我の喪失や忘却、および世界との融合感
(4)自分の行為や環境を自ら支配できているという感覚、(5)首尾一貫した矛盾のない行
為が必要とされ、そこに明確なフィードバックがあること、(6)自己目的的、つまり他の目的
や外発的報酬のためにそれをしているのではないこと。
 経営行動科学学会(編)(2011)『経営行動科学ハンドブック』中央経済社pp.240 

 昨今、没頭することを妨げる要因が増えたように思います。

 ・仕事の種類、量の増大。

 ・検索、メール、携帯電話(スマホ)、フェイスブック、ツイッター等による仕事の中断、
  アクセビリティの向上。
 ・情報過多。

 そもそも、多くのリーダー、マネジャーは、その理想とは大きくかけ離れ、多忙を極め
没頭できる(フロー状態に入れる)状況にないと言われています。

マネジャーの活動には、短時間多様性断片的、という特徴がある。その大部分は
に短時間で、職長は秒単位、経営者でも分単位。行われるべき活動の多様性は大き
く、連
続して起こる活動の間にはパターンはない。結果として起こることに些細な利害関
係でもあれば、マネジャーはすばやく頻繁に気分転換しなければならない。一般的に、
マネジャーの仕事は断片的で、中断されるのはあたりまえのことである。
 ヘンリー・ミンツバーグ(著)/奥村哲史、須貝栄(訳)(1993)『マネジャーの仕事』白桃
書房pp.85

 自身の、組織構成員のモチベーションを高め、高いパフォーマンスを創出する等の点か
ら、経営者、リーダー、マネジャーにとって、「没頭できる環境を作る(ゾーンに入る)」とい
う能力の重要性がより高まっています。
 ・自分自身が没頭する。没頭できる環境を作る。
 ・部下、仲間が没頭できる環境を作る。

 「瞑想力」「断る(勝間和代)」なども、具体的に、状況に応じて、効果的に発揮する
には相当の修練が必要なのでしょうが、「没頭する。没頭できる環境を作る」ための能力
です。

スタッフ
 監督・製作:マーティン・スコセッシ
 原作「ユゴーの不思議な発明」:ブライアン・セルズニック

キャスト
 ヒューゴ・カブレ:エイサ・バターフィールド
 イザベル:クロエ・グレース・モレッツ
 パパ・ジョルジュ/ジョルジュ・メリエス:ベン・キングズレー
 鉄道公安官:サシャ・バロン・コーエン
 ママ・ジャンヌ:ヘレン・マックロリー
 ヒューゴの父:ジュード・ロウ

Vol.29  2012年3月3日(土)

 「私の(生まれてきた)目的は何かしら」と悲しげにつぶやくイザベル。
 イザベルは(おそらく第一次世界大戦で)両親を失っています。

 ヒューゴが語りかけます。
 「(母を失い、そして)父さんを失った後、この時計台から街(1930年代の
フランス)を見ていると、世界が一つの機械のように思えた。機械には目的が
る。機械には不要な部品は一つもない(部品一つひとつに目的がある)。僕
何かの目的を持って生まれてきたはずだ。君にも必ず生まれてきた目的が
あるはず」。
 ※以上、あくまで私が映画を見た時の記憶に基づく台詞です・・・。

 ヒューゴの父が心ときめかせた、壊れた機械人形は、ヒューゴにとっては父
の形見のような存在です。なんとしても、壊れている機械人形をヒューゴは直
したい。命を吹き込みたい。

 ヒューゴは修理に成功します。

 その機械人形が描いた絵は・・・。

 ヒューゴが修理した機械人形は、描いた絵を通じて、第一次世界大戦で、キャ
リアと希望、そして尊厳を失った初老の伝説の映画監督(パパ・ジョルジュ/ジョ
ルジュ・メリエス)とその妻(ママ・ジャンヌ)、2人に引き取られ育てられている少
女(イザベル)、片足を失った鉄道公安官、兄を失った花屋の女性・・・、そして、
なによりヒューゴ自身に生きる目的を与えるという奇跡を起こします。

 生まれてきた目的、生きる目的、働く目的、稼ぐ目的・・・。
 目的はあるか、否か。
 あるとしたらどのような目的か。

 深い問いですね。

 経営者やそれに準ずる要職にある方々から、様々な経営活動について、その
目的や意味を問われることがあります。

 正直、「そんなことちょっと真剣に考えれば分かるでしょう」「それを考えるのが、
そしてそれを社内に発信するのが、あなたの仕事でしょう」と言いたい衝動にか
られることが多いのですが、その衝動にグッとブレーキをかけることが大半です
(「真剣に考えれば分かるでしょう」等と申し上げることも少なからずあります)。

 それの目的や意味には、唯一無二の正解はない(ことが多い)。
 それの目的や意味は様々である。
 自身の信念、価値観を信じて、それの目的や意味は、いずれかから選択するし
かない。

 「目的や意味を教えて欲しい。(間違っていないか)確認したい」と問うのは、「目
的や意味に正解がある」と思っていたり、自身の信念や価値観に自信が持ててい
なかったりする状況であるのかもしれません。

 これまでやってきたことを止める。
 やろうと考えていることを止める。
 「止めると、困ったり、落胆したり、文句を言ったりする人(含、自分)や組織はい
らっしゃいますか?ありますか?
 「いる、あるのであれば、”それ”には何がしかの目的や意味があるのではない
でしょうか」
 ※それ=生きる、働く、稼ぐ・・・

 目的や意味を問われた際に、このようなやり取りをすることがあります。

 目的や意味を見出すには想像力や経験、知識が必要な時があります。

 目的や意味を求めて彷徨う人は、想像力を発揮していなかったり、経験や知識
が十分でない可能性があります。
 イザベラが 「私の(生まれてきた)目的は何かしら」とつぶやくのはいたしかた
ありません。彼女は幼く、経験、知識が圧倒的に不足しています。

 目的や意味が見出せないことでモチベーションが高まらない、その結果として十
分な成果物を作りだせないのであれば、(成果物を手にする)目的や意味を見出
す(明らかにする)ことから、いったん距離を置いた方がいいのかもしれません
目的・意味を考えることを止めるのです。

 目的・意味を考えることを止める。 とはいえ、
「目的は大事」「目的からブレイクダウンする(。そして、具体策を決め
る」「目的・ゴールから逆算する。多くの著名人、大家が語っています

 目的を持って始めるということは、目的地をはっきりさせてから旅立つことである。
目的地を知ることで、現在地もさらによく分かるようになるし、いつも正しい方向に
向かって歩み続けることができるようになる。

 スティーブン・R・コヴィー(著)/ジェームス・J・スキナー(訳)(1996)『7つの習慣』
  pp.127-128

 《三行の経営論》本を読む時は、初めから終わりへと読む。ビジネスの経営はそれとは逆だ。終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ。
 ハロルド・S・ジェニーン、A・モスコー(編著)/田中融二(訳)(2004)『プロフェッショ
 ナルマネジャー』pp.34 

 新入社員が入社したてに習うものの一つに5W1Hがあります。このうちのWhyは
目的・意味に関する問いです。

 多くの方は、私もその一人なのですが、知らず知らずのうちに、目的を重要に考え
過ぎていたり、目的を過大に評価し過ぎていたりするのかもしれません。

  成果物を手に入れて見出す(分かる)目的・意味も多々あります。

 成果物を手に入れ、当初設定していた目的・意味が、実は適切でなかったことに気
づく
こともあります。

 目的・意味が明らかでないことを、目的・意味に納得できないことを、成果創出のため
のアクションに着手しない、アクションへ心血を注がない”言い訳”にする方もいらしゃい
ます。

 コッターは、企業変革プロセスの初期におけるビジョン(行き先)の発信を、「性急過
ぎる」と懸念しています。

 世界は複雑になり、変動が激しくなっている。小規模な企業や、大企業の小さな部門
が直面する問題ですら、極めて複雑になる。英雄ひとりがすべてを解決できるとは考え
られなくなっている。適切な人材を配置し、困難な仕事に取り組み、協力し合うチーム
必要である。こうしたチームを作ってから(第二段階)、ビジョンの策定に取り組むべきだ
(第三段階)。適切な人材を見いだし、協力して困難な仕事に取り組むようにするには、
危機意識が必要である(第一段階)。

 ジョン・P・コッター、ダン・S・コーエン(著)/高速裕子(訳)(2003)『ジョン・コッターの
 企業変革ノート』pp.50

 行き先にたどり着くための策を検討するよりも先に、まずは行き先にたどり着く目的・
意味について熟考し、明らかにすることは、はしごのかけ違いを防ぐ、組織構成員の
活動のベクトルを合わせる等の点から極めて有用性に富むことは間違いありません。

 しかし、その行き先、その行き先の目的・意味の明確化、納得にこだわることには
注意を払う
必要があるようです。

 

映画『ヒューゴの不思議な発明』

スタッフ
 監督・製作:マーティン・スコセッシ
 原作「ユゴーの不思議な発明」:ブライアン・セルズニック

キャスト
 ヒューゴ・カブレ:エイサ・バターフィールド
 イザベル:クロエ・グレース・モレッツ
 パパ・ジョルジュ/ジョルジュ・メリエス:ベン・キングズレー
 鉄道公安官:サシャ・バロン・コーエン
 ママ・ジャンヌ:ヘレン・マックロリー
 ヒューゴの父:ジュード・ロウ

Vol.28  2012年3月2日(金)
2ヵ月ほどメルマガの発行を止めておりました。
コラム『メルマガはしばらくの間発行を止めます』
http://www.kkkiduki.jp/article/14229882.html
ご購読登録いただいた方々、申し訳ございませんでした。


本日よりメルマガの発行を再開いたします。

メルマガの発行は不定期です。
仕事の繁閑等、いかんともしがたい事情によるものでありますことから、ご了承ください。

よろしくお願いいたします。

Vol.27  2012年2月23日(木)


 「研修体系作ってもらえませんか」
 「研修体系を一緒に見直してもらえないでしょうか」

 そんな相談を受けることがあります。

 

 研修体系とは、ここでは、以下のように定義しておきます。

 『個々別々の研修(Off-JT)同士が、また個々別々の研修(Off-JT)とそれら
研修(Off-
JT)の全体像が、論理的に関係づけられている研修(Off-JT)の
全体像

 『個々別々の研修(Off-JT)を系統的に統一して表している研修(Off-JT)の
全体像』

 ※これらの定義は私の定義です(学術的な定義ではございません)。

 私がよく拝見する研修体系は、
縦軸に、等級、グレード、役職などが並び、
横軸に、コース、職種、部署などが並び、
縦軸と横軸の交差するボックスに
研修名称が記載されているという様式のものです。

 例えば、以下のようなものです。
 ---------------------------------------------------------
| 等級| コースA | コースB | コースC |   
 ---------------------------------------------
------------   

|  5  | 研修A5 | 研修B5 | 研修C5 |
 ---------------------------------------------
------------
|  4 | 研修A4 | 研修B4 | 研修C4 |
 ---------------------------------------------
------------
|  3 | 研修A3 | 研修B3 | 研修C3 |
 ---------------------------------------------
------------
|  2 | 研修A2 | 研修B2 | 研修C2 |
 ---------------------------------------------
------------
|  1 | 研修A1 | 研修B1 | 研修C1 |
 ---------------------------------------------------------

 この場合、個々別々の研修同士の関係、また個々別々の研修とそれらの研修の全体像の関係に論理性を与えているのは、縦軸(等級)と横軸(コース)です。

 このような様式で個々別々の研修を系統的に統一し整理して表すことにより、
どの等級、グ
レード、役職の方々は、どのような研修を受講する必要があるのかが一目瞭然となります(例えば、コースAの5等級の方々は、研修A5を受講する必要があることがわかります)。

 上記の表では、縦軸と横軸が交差するボックスに研修名称(例:研修A5)を入れています

 この研修名称よりも先にこの交差するボックスに入れる必要のあるものがあります。

 それは、
期待する人材像
期待する役割
期待する能力(知識、スキル・技能、態度等)
評価項目
等です。

「期待する人材像」「期待する役割」「期待する能力」「評価項目」等がなかった
り、あまりに不明確であったり
すると、原則として、研修の内容を組み立てること
はでき
ません(当然、研修名称は付けられません)。

「研修体系を作ってもらえませんか」 
「研修体系を一緒に見直してもらえないでしょうか」

 研修体系の作り方にはいろいろあるのでしょうが、上記のような相談を受けた
際の私の打ち手は、大きくは以下の4つに分けられます。


 ① 縦軸−等級、グレード、役職など−、横軸−職種・職群、部署、コースなど−
       を見直す
〜人材のセグメントの見直し〜

 ② 「期待する人材像」「期待するスキル・技能」「評価項目」等を見直す

 ③ 「「期待する人材像」「期待する役割」「期待する能力」「評価項目」」等と研
      修内容
をフィットさせる

 ④ 個々別々の研修の予算配分を見直す

 上記の①〜④に関して私(ども)の主たるご支援パターンは以下の通りです。
 ①→②→③→④ ※①から②、②から③、③から④と順にご支援する。 ①→②→③
 ①→②
 ②→③→④
 ②→③ ③→④
 ③のみ

 私の限られた経験からではありますが、最近は、「③→④」のご支援を依頼さ
れるケースが多いように思
います。「①、②は現状のままでよい。あるいは、自
分たちで見直す。③および④をお願いし
たい」というご依頼です。

 ③は、実は、盲点のように感じています。 

 「「期待する人材像」「期待する役割」「期待する能力」「評価項目」」等と研修内
容はフ
ィットしていて当たり前です。しかし、意外にも、フィットしていない状況が多々あります。

 
フィットしていることを(強く)実感できていない人材育成担当者の方が思いのほか多いようにも感じます。

 研修には、いえ研修に限らず、あらゆる経営活動には基本的には目的、大義が
必要です。
研修に目的や大義を付与する、研修に「錦の御旗」を立てる上で、③
は極めて重要であると私
は認識しています。

 ご支援を求められるクライアント様には様々な事情があります。

 上記のようないろいろなパターンでクライアント様の研修体系最適化に向けてお
手伝いをさ
せていただく、クライアント様の様々な事情に応えることが人材育成の
仕事では大事だと私は思
っています。

Vol.26  2012年2月20日(月)

 「この研修は役に立たないですね」
 「研修(の内容)は活かせませんね」

 こんな研修受講者の声を聞くことがあります。

 「このクソ忙しい中、こんなこと(研修)で呼び出すなよ」
 「役に立たない研修に、こんなに金をかける必要があるのか」

 批判が聞こえてくることもあります。

 基本的に忙しく、また豊富な経験や様々な信念、目的を有していることなどか
ら、それなり
の心持ち、環境が整わないと、また相応の教えられ方でないと、
修(学習)に身が入らないビジネ
スマンが多いのは、当然と言えば当然です。

 成人は、多くの固定した思考の習慣やパターンを有しており、この点ではあま
り開放的では
ない

 マルカム・ノールズ(著)/堀薫夫、三輪建二(監訳)(2002)『成人教育の現代 的実践−ペタ

ゴジーからアンドラゴジーへ−』鳳書房pp.50

Amazonロゴ小

 成人は多くの学習に対して、応用の即時性(immediacy of application)という

枠組みをもつ傾向にある。彼らは、多くの場合、現在の自分の生活状況におい

て感じているプレッシャーへの対応という形で、学習に参加する。成人にとって

教育とは、自分が現在直面している生活上の問題に取り組む能力を向上させ

るプロセスなのである。彼らはしたがって、問題解決中心な(problem-centered)、

あるいは課題達成中心的な(performance-centered)精神の枠組みをもって

教育活動に参加するといえる。

 マルカム・ノールズ(著)/堀薫夫、三輪建二(監訳)(2002)『成人教育の現代
 的実践−ペタ
ゴジーからアンドラゴジーへ−』鳳書房pp.56

 ビジネスマン(成人)に人材育成サービスを提供するにあたっては、彼らの
持ちや環境に配慮しそれらを
整える、また彼らの経験を活かす方向でカリキュ
ラムを組み立てる教え方に工夫を凝らす


 当然のことです。

 この考えを大前提に、以下、話を進めます。

 繰り返しますが、 ビジネスマン(成人)に人材育成サービスを提供するにあたっ
ては、彼らの
持ちや環境に配慮しそれらを整える、また彼らの経験を活かす
方向でカリキュラムを組み立てる教え方に工夫を凝らす。当然です。

 とはいえ、言うは易し行うは難しです。

 例えば、研修の内容が「実利的であるか否か」「やりたいとことなどと関係して
いるか否か
」「自分の目的に合致しているか否か」。

 判断は、受講者、研修事務局、サービス提供事業者、受講者の上司等の主観
に依ります

 「研修の内容は受講者にとって役に立つ」「研修で学ぶことは受講者の重要な仕事と関連し

ている」と研修事務局、受講者の上司、サービス提供事業者等が認識していたとしても、受講

者本人がそのように認識しない限り、この研修は受
講者にとって身の入る「大人の学習」では

なくなるのです。
 

 「(研修は)自分(受講者)にとって役立つ

 「(研修は)いずれ自分(受講者)がやりたいとことと結びつく

 人材育成(研修)サービスを提供する者は、どこまで受講者を説得したり、理
解を促したり
る必要があるのでしょうか。どの程度まで配慮せねばならないの
でしょうか

学習に関する責任の所在はどこにあるのでしょうか。
だれが学習の責任を持つべきなのでしょうか。


 「木下さん、私は受講者に過剰なサービスを提供するつもりはありません。甘やかすつもりもありません
 「研修が役立つがどうかは受講者の主観次第です」
 「研修が役立つとか役に立たないかは受講者が決める(受講者が責任を負う)ことです」。
 「このような学習に関する覚悟も受講者には必要ではないでしょうか」
 「昨今の受講者の中には甘え過ぎている者もいます」
 「私がやるべきことは、組織が期待する人材の育成に少しでも貢献できるよ
う最善を尽くすことのみです」
 「私の顧客は組織です。」
 「受講者の声・評価はもちろん大切です。しかし、最優先すべきものではあ
りません

 某大手企業の研修担当者(A氏)が、静かに、しかし決意を持ったような眼差しで、正面から、私に語ったことがあります

 A氏の考えに私は共感する点もあります。

 組織が大きな変革の舵を切りつつある状況下で、他の様々な経営施策の
一環として、他の様々な経営施策と連動する形で展開される人材育成施策
(研修)などは、受講者にかなりのストレスをかけ、また将来を見通した、能
動的な受講者からしか肯定的に評価されないようなことがあります。


 自律したビジネスマン
 こんな言葉が登場し久しく時が流れました。

 以前のコラム「スパルタ的な育て ギリギリの時点で、最小限の・・・」において私は次のような考えを述べました。
 http://www.kkkiduki.jp/article/14158195.html

 ●「スパルタ的な育て」の危険さ、難しさを前提としながらも、「育て」において、  スパルタ的要素は必要不可欠。
 ●人材育成に責任を負う者は、「ギリギリの時点で」、「最小限の」 支援を与
  えるという
スパルタ的な基本的な姿勢・マインドを決して忘れてはならない。

 ①学びが役立つがどうかは、基本的には、自分(受講者)の主観次第で
  ある。


 ②学びを役立てるか役立てられないかは、基本的には、自分(受講者)
   が責
任を負う


 ③人材育成責任者・担当者にとって受講者の声・評価は大切。しかし、
   最優先すべきものではない(良い意味でのプロダクトアウト志向)。


 このような考えのスタンスで人材育成サービスの内容を検討したり、人材育
成サービスを提供したりする方が、その組織、場の状況によりフィットする人
材育成サービスとなるケースも多々あるように感じます。



 
上記の考え①、②は、自律したビジネスマンになる上で、自律したビジネスマンであるための、発達に関する必須のマインドのように、私には思えます。

 将来の不透明感が増す中、職場には組織間や世代間の価値観・コミュニ
ケーションのギャップ、あつれきがあったり、
言うことだけ言って責任をとらない人フリーライダーがいたりなど、理不尽なことも多い。そんないろいろなこと
に文句を言いたい気持ち、分らなくもありません。いえ、もの凄く分かります。 


 「この研修は役に立たないですね」
 「研修(の内容)は活かせませんね」
 これらの発言も、いろいろ言いたい文句の一つなのかもしれません。
 こう発言する気持ち、心情に思いをはせると、発言する方を取り巻く環境へ
の影響について自分の非力さを感じることも多く、申し訳ない気持ちで一杯

にもなることが多々あります。

 しかし、あえて申せば、自律したビジネスマンであるためには、また組織から
将来を嘱望され、またその嘱望に応えるつもりが少しでもある、例えば、次期
経営者候補次期リーダー候補にとっては、能力(知識、スキル・技能、態度)
の発達を維持・加速する上で、上記の考え①、②を学びに取り組むベースとし
て有していることが極めて重要なことのように私には思えます。


 上記の考え①〜③に対して「私も同じ考えだ」と表明する人材育成責任者・担当者、人材育成サービス事業者には、より大きな「人材育成サービスのクオ
リティに係る責任」が課せられます。


 
上記の考え①〜③に対する態度は、人材育成サービスのクオリティの提供に係る覚悟の度合いを測る目安になるようにも思います。

 

 クオリティ
 クオリティの語源の「クオリス」とは物事の本質や性質を意味しています。
クオリティが高いという意味は、その本質や性質が目的に合致していること
を意味しているのです。しかし、私たちはとかく自分勝手に都合よく目的を
決めて、それに合致しているから「良いものだ」と決めつけてしまうことが多
々あります。いわゆるプロダクトアウトといわれるものです。経営品質向上
プログラムでは、目的はすべてお客様の価値ということにおいていますので、
「顧客から見たクオリティ」という言葉を用いているのです。ここで重要なこと
は、目的に合致しているということがクオリティの高さを決定するわけですか
ら、同じ目的をもったお客様をきちんと見極めることが大前提になります。す
べてのお客様にとって合致することや、すべての状況で合致することではあ
りません。
 経営品質協議会(2009)『2009年版 経営品質向上プログラム アセスメントガイド
 ブック』pp.15

共感 sympathy

 他人の体験する感情や心的状態、あるいは人の主張などを、自分も全く同じように感じたり理

解したりすること。同感。「―を覚える」「―を呼ぶ」

 [株式会社岩波書店 広辞苑第五版]
 

 自律

 ①自分で自分の行為を規制すること。外部からの制御から脱して、自身   
 の立てた規範に従って
行動すること。

  ②〔哲〕(Autonomieドイツ)

 ア)カントの倫理思想において根本をなす観念。すなわち実践理性が理   
 
性以外の外的権威や自然的欲望には拘束されず、自ら普遍的道徳法     
 を立ててこれに従うこと。

   イ)一般に、何らかの文化領域が他のものの手段でなく、それ自体のうち      に独立の目的・意義

・価値を持つこと。←→他律。
  [株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

Vol.25  2012年2月7日(火)

 「耕二、あまえ、根なし草になったらダメだぞ・・・」。
 12年前故郷の福岡を離れ上京する際、大学時代の恩師から言われました。

 
ピンときませんでした。
 言葉の意味が分かりませんでした。

 いや、むしろ、反発の感情を抱いたように記憶しています。
 「どこに行ったって、どこに居ても、自分は自分だ」と。

 母が急逝し、父は新居に引っ越しました。
 私が4歳から34歳まで育った家は売却します。

 「帰る場がなくなった・・・」

 恩師の言葉の意味を、今初めて、実感しています。

 経験しないと分からないことだらけです・・・。

 「私たちの世界は経験しないと分らない(理解できない)ことが多い・・・」。
 「だから豊富に経験した方がいい」」。
 わが子にはしっかり伝えていきたいですね・・・。


 
デラシネ【deracineフランス】
 故郷喪失者。根なし草。
 [株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

Vol.24  2012年2月2日(木)

 昨日から琵琶湖の近くで仕事をしています。
 今日は朝から雪が降っていました。

 ここ数日、日本列島はすっぽりと冷蔵庫に入ったような寒さです。 
 
日本海側の地域は平成18年以来の大雪警報が出ています。

 湖畔の木々は舞い散る粉雪をただただ受けるだけです。 
 
身が凍える思いです。

 粉雪を見ていましたら、4歳頃まで住んでいた門司(福岡県北九州市)の家
のことを思い出しました。 「ALWAYS 三丁目の夕日」に登場するような、狭く
て、隣の家の物音が聞こえてくる、ネズミが走り回る、木造の、そんな家です。

 風呂は父が薪をくべて沸かしていました。 
 
練炭の火鉢がありました。

 今日のような粉雪がよく降っていたように記憶しています。

 父と母が喧嘩して、母が投げつけたスリッパがガラス窓を割ったことがあり
ました。

 母が私を連れて家を飛び出したこともありました。飛び出したといっても
貨店に行っただけです。家に帰ると家の前で父が
心配そうな顔をして立って
いました。

 「きのしたさ〜ん」 
 病院で名前を呼ばれると私は脱兎のごとく待合室から逃げ出していました。

 看護婦さんや母に捕まえられることは分かっているのですが。

 すべてが暖かな記憶です。

 久方ぶりに、母に会いたくて、会いたくて、しかたないです。
 叶わぬことです・・・。

 もうすぐ50になろうかという大人が仕事場で泣いては話になりません。
 こらえました。

  一人暮らしに慣れてきた父に週末にでも電話してみようかと思います。

 粉雪が私を、いっときの間、若かりし父、母に会わせてくれました。

 エピソード記憶は人生を豊かにしてくれます。

 人材育成、部下指導、ストーリーテリングなどビジネスの様々な点からも、
エピソード記憶は重要なキーワードです。

エピソード記憶 
個人が過去において体験したユニークで、日付のある、具体的な知識に
関する記憶である。「昨日の昼食でうどんを食べた」「小学5年生のときに、
遠足で淡路島に行った」といった内容の記憶をエピソード記憶と呼ぶ。エピ
ソード記憶は、一般に特定の状況で起きた出来事ないしエピソードの記憶
である。
日本教育工学会編(2000)『教育工学事典』実教出版 pp.135

エピソード記憶

時空間的に定位された自己の経験に関する記憶のことをいう。「いつ」「ど
こで」という問いに答えられるような記憶のことで、「昨晩はカレーライスを食
べた」とか「高校時代に北海道に旅行した」とかいう記憶である。伝統的な
実験室的記憶実験で、単語を呈示し、それを再認法や再生法で測定する場
合の記憶も、その単語を見たということを想起しているので、エピソード記憶
という。エピソード記憶に対して、教科書・百科辞典・辞書などに書いてある
知識の記憶を意味記憶という。これらの知識は獲得された時には、いつ、ど
こで、どのようにしてその知識を得たというエピソード記憶であったと考えら
れるが、その後、意味記憶化したと考えられる。同様に、自分の経験したこ
とでも、何十年も昔のことは、エピソード記憶ではなく自己に関する知識とし
て記憶していることでもあり、この場合は、自分の経験でも意味記憶である。

中島義明、安藤清志、子安増生他(1999)『心理学辞典』有斐閣 pp.69

Amazonロゴ小

心理学辞典←click!

Vol.23  2012年1月28日(土)

 私が木下耕二ラーニングコラムを立ち上げた動機の一つは、大げさな表現で
まことに恐縮ですが、「遺産  legacy 」です。
 コラム「vol.1 インターネットによる情報の発信 今なぜ?」
 
http://www.kkkiduki.jp/article/14157979.html

 この「遺産  legacy 」の一つがコラムです。

 このコラムを、コラム「vol.19 死 それは最高の発明・・・」からビジネス版と
プライベート版に2分類しています。

 http://www.kkkiduki.jp/article/14230501.html

 コラムを書きためていくうちに、コラム個々にはいろいろなタイプ、性質等があ
り、コラムという一つの分類に納めておくのはさすがにまとまりが悪くなってきて
いるように感じていました。

 「子供には遺しておきたい(本ラーニングコラムにアップしたい)コラムだ。しか
し、仕事でお付き合いさせていただいている方々に対しては果たしてどうなの
か・・・」。
 

 そんな迷いが増えました。

 そこで、コラムをビジネス版コラムとプライベート版コラムに2分類することにしました。

 2分類しましたが、どちらにしようか迷うコラムも多々あります。
 例えば、コラム「vol.14 サンタさんお願いします! 素朴理論」です。

 http://www.kkkiduki.jp/article/14220094.html 

 分類に多々迷うのは、私がもともと、「両者(ビジネスとプライベート)を分けて考えているタイプではない」ことが大きな要因としてあるように思います。 
 「これってビジネスコラムか?」などと違和感をお持ちになる方々もいらっしゃるかと思います。お許しください。

 今後とも、木下耕二ラーニングコラムをよろしくお願いいたします。

【補足】
分類
①種類によって分けること。類別。「昆虫を―する」

②〔論〕(classification) 区分を徹底的に行い、事物またはその認識を整頓し、   体系づけること。彙類いるい。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

Vol.22 2012/1/19(木)
仕事で一週間ほど滞在していた新狭山(埼玉県)で見つけた店は 『鳥正』 。埼玉県地鶏のタマシャモ、日向地鶏の焼き鳥、水炊き、どんぶり・・・。店主と女将さんの控え目&的を射たホスピタリティなど、素晴らしい。一緒に仕事をした皆さん、仕事が遅れ連れて行ってやれなくて(自分だけ行って)ごめんなさい。

http://r.tabelog.com/saitama/A1106/A110602/11003148/

vol.21  2012年1月18日(水)


今から10年ほど前のことです。

関西にて洋菓子店を展開しているS社の定例ミーティングに同席していた際、

「自分ができないことであっても部下に指示するのが上司の役割だ!」と説い

たO部長に対し「自分ができないことを指示するなんて私にはできない!」と

A課長が喰って掛っていました

 

 これも今から10年ほど前のことです。

 全国のシティホテルに出店しているK社(サービス業)での経営会議におい

て、●●ホテルからの取引中止要請にどう対応しようかとの議論が白熱してい

た時のことです。


「木下さん、●●ホテルから撤退すべきでないことは、私(K社のB営業部長)
にだって分か
っていますよ」

「でもですね、木下さん、分ってますか!●●ホテルは当社との取り引き中止
を決定しているんですよ!!

「今さら、交渉も何もないでしょう(交渉しても無駄だ)!!!」。

 あらためて交渉の再考を提案する私(木下)に対して、B営業部長はこう

言いました。

 「だったら、木下さん、交渉してくださいよ!!」


 O部長はA課長に、私(木下)はB営業部長に、どのようにしていたら影響を与えることがで

きた(受け入れられた)のでしょうか?
 

この問いへ答えるにあたり参考となりえる理論の一つとして
パワーの源泉(French & 
Raven,1959)」があります。 

この理論によれば、影響の基盤は報酬強制(懲罰)正当準拠(私淑)
専門の5つのタ
イプに分けられます。


報酬
 「BがAに従うことによりBがAから与えられるであろう報酬を認知すること」
 に基づく影響の基盤  例:アメ
強制(懲罰)
 「BがAに反することによりBがAからあたえられるであろう懲罰を認知する
 こと」に基づく影響の基盤  例:ムチ
正当
 「AはBにパワーを発揮する正当な権利を持ち、またBはAに従う義務があ
 るとの意識・価値観」に基づく影響の基盤  例:上司と部下の関係
準拠(私淑)
 「BのAに対する同一視(一体でありたい)」に基づく影響の基盤 
 例:あの人のようになりたい
専門
 「Bが”Aはあることに関して専門能力を有している”と認知すること」に基づ
 く影響の基盤  例:●●についてならあの人の右に出る者はいない

 パワーの源泉の理論に基づきO部長と一緒にO部長の日々のマネジメント
やリーダーシップのあり様について振り返りました。
 O部長は「強制という影響の基盤が圧倒的に弱い」、「強制という影響の基
盤をもっと活用できるよう訓練すべき」ということでO部長と合意しました。

 私(木下)もこの理論に基づき自分を振り返ったところ、「報酬という影響基
盤をもっと意識して使えばいいのではないか」と気づきました。

 昨今日本で人材育成のモデルとして注目を集めている経験学習は、
経験-②内省-③概念化-④実験-以降①~④の繰り返し-という一
連のサイクルで構成されます。

 個人は①具体的な経験をし(具体的な経験)、②その内容を振り返って内省
することで(内省的な観察)、③そこから得られた教訓を抽象的な仮説や概念
に落とし込み(抽象的な概念化)、④それを新たな状況に適用する(積極的な
実験)ことによって学習するのである。
 松尾睦(2006)『経験からの学習』同文館出版pp.62

内省(振り返り)において、一般的に、理論は非常に役に立ちます(使えます)

理論を基に内省(振り返り)が効果的・効率的に行え、ひいては、有効な教訓
を引き出せる可
能性が高まります。

 

実践家の中には、理論というと「理論と実践は違う」、「理論通り行くならこんな楽なことは

ない」、「使えない」、「机上の空論」、「難しい」などと好ましくない感情を持つ方も少な

からずいらっしゃいます。

 

おっしゃる通りかもしれません。
 

状況に応じた使える理論と使えない理論の区別使える理論の実践策への
展開等、理論を活か
そうとすると骨が折れることが多々あるのも事実です。

 

しかし、経営者、リーダー、マネジャーなどの実践家・実務家が、この変化の
激しい環境を生
き残るため、新たな教訓、斬新な教訓を自らの経験の中から
見出し、実践に繋げ、成果を上げ
る上では、実践家は「理論は使える!」との
信念
を持ち、また「理論は使い倒す!」の気概を持って、論を学ぶ必要があります。

 

また、実践家は、理論を学ぶ上において「理論が分からない、使えないのは、
自分の能力等に
要因がある」との謙虚さを持ち合せることも大切です。

 

「理論と実践は違う」、「理論通り行くならこんな楽なことはない」など、「使え
ない理論」
云々の話は、そもそも、

その状況下では使うべきでない理論を使おうとしている
その理論
を使いこなせるだけの能力がないにもかかわらずそのの理論を使おうとしている

といった状況下で発生していることが多いのです。

 

謙虚さは、経営者、リーダー、マネジャーが良き経営、マネジメントを継続する上

で重要な特性の一つでもあります。
 

O部長、私は、10年前、たまたま私が「パワーの源泉」という理論を知って
いたことで経験
学習のサイクルをうまく回すことができました。

あれから10年、二人とも、経験学習のサイクルを回し続けています

二人とも、持ち駒(有益な教訓)の数、バリエーションは増えました。

vol.20  2012年1月12日(木)

 日本には、”さくら”という販促のやり方が存在していました。

 さくら【桜】
 ただで見る意。芝居で、役者に声を掛けるよう頼まれた無料の見物人。転じ
て露店商などで、業者と通謀し、客のふりをして他の客の購買心をそそる者。
また、まわし者の意。

[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

 
2000年以降に登場した以下の類のマーケティング手法について、
 ・口コミマーケティング
 ・バズマーケティング
 ・バイラルマーケティング etc.

 私はその真っ当さ、有効性を、有益性を、事業者という活用する側として、ま
た一人の消費者という活用する側としても、認識していました。

 しかし、
インターネットソーシャルネットワークの普及と共に、そして経営や
商業に係る道徳の荒廃を実感する中で、私は上記マーケティング手法におけ
”さくら”の存在の胡散臭さ(怪しさ)を強く感じていました。

 
今では、悲しいことに、ステルスマーケティング という言葉まで存在しています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0


 真摯に口コミマーケティング等の啓蒙、普及に取り組まれてきた(いる)方々に
とっては本当に迷惑な話です。
※チャンスでもあります・・・。


 
さくら”は”やらせ”の一形態と捉えることもできる気がします。

 やらせ【遣らせ】
 事前に打ち合せて自然な振舞いらしく行わせること。また、その行為。
 [株式会社岩波書店 広辞苑第五版]


 ”やらせ”は、私の認識では、日常、特にビジネスシーンでは、その良し悪し
は抜きに、よく行われています日本的な行いなのかもしれません。


 
食べログに端を発する今回の現象を、倫理の点から問題として取り上げる
向きがあります。

 倫理
人倫のみち。実際道徳の規範となる原理。道徳。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

 道徳
 人のふみ行うべき道。ある社会で、その成員の社会に対する、あるいは成
員相互間の行為の善悪を判断する基準として、一般に承認されている規範の
総体。法律のような外面的強制力を伴うものでなく、個人の内面的な原理。
今日では、自然や文化財や技術品など、事物に対する人間の在るべき態度
もこれに含まれる。

[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

そもそもとして、”やらせ(さくら)”を許容していた文化が日本にはありまし
た。
今後もなくなるとは思えません。

「何かおかしいな・・・」と感じつつも、「まあ参考程度に使ってみよう・・・」
「それほど大外れすることもないし・・・」という程度での使われ方が『食
べロ
グ』の総じての状態であったと私は認識しています。


 
これらのことから、倫理の問題としてまで今回の食べログ関連の問題を
取り上げることに私は少々違和感を覚えます。

行政による規制強化は必要でしょう。
「何を信じていいのか分からない」と本気でお悩みの方々が、私が想定
した以上に多いようですから。
見えざる手(invisible hand、アダム・スミス)にお任せするには(最終的に
は望ましい状態になるのでしょうが)、一時的にものすごく悪い状態へブ
レてしまう危険性が高い気がしますので。


 
”さくら”に翻弄されたくないのなら、「何が真実で何がそうでないのか」に
もっと敏感になったり、性悪説の立場からのものの見方をもっと身につけ
たりした方がよい方々もいらっしゃるかもしれません。


 
性悪説
 荀子の性説。人間の本性は悪であるとして、礼法による秩序維持を重ん
じた。孟子の性善説に対立。

[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

 
ネガティブさ(例:悲観的に予測する、用心深さ、問題の指摘)が、生き残っ
たり望む成果を生み出したりする上で、あらためて大切な時代になったと私
は認識しています。


 
多くの人たちの稼ぎや幸せに大きな影響を与える経営者、リーダー、マネ
ジャーという立場の方々はなおのことではないでしょうか。


 
昨今の人材育成(研修)において、ネガティブさは、ポジティブさと比較して、
テーマとしても、人材育成の場(研修会場)の雰囲気としても、避けられる(人
気がない)傾向にあるように私は感じています。


 
私たちはネガティブさともっともっと対峙すべきなのかもしれません。

vol.19  2012年1月8日(日)
 
 世の中、ジョブズ、ジョブズ、ジョブズ、ジョブズ、ジョブズ・・・・・・・・・・・。

 ゲ
ンナリ、もう勘弁、食傷気味だ・・・。という方々。
 
もう見た・聞いた。何をいまさら・・・。という方々。
 
ジョブズを引用すればいいというわけじゃない・・・。という方々。
 
その他、●●●●、▲▲▲▲、■■■■・・・・。という方々。  (^_^;;

 私も皆さんと同じ思いです!

 し、し、し、しかし、ご容赦ください m(_ _)m 。


 ”今(2012/1/8)”の自分(木下耕二)にとってはとても意味深く、価値のある
スピーチなのです。

 今の私は、ジョブズがスピーチで述べているように死を捉えないと、精神の健
常さを保てません・・・。


 スティーブ・ジョブズ 日本語で学ぶ伝説のスピーチ(字幕)
 http://www.youtube.com/watch?v=87dqMx-_BBo
 Steve Jobs' Address at the Stanford University's 114th Commencement
 on June 12, 2005.
    
 ※【CC】から英語­と日本語から選べます。
 ※日本語字幕を確実に見たい方は以下から。
http://www.youtube.com/watch?v=OaMT8fZpEXA&feature=related


・・・・・・・・・・・・・・・・・以下、上記youtube上の日本語訳より・・・・・・・・・・・・・・・・・

 私は17の時、こんな言葉をどこかで読みました。

 「毎日、これが人生最後の日と思って生きなさいやがて必ず、その通りにな
る日がくるから」。

 それは私にとって印象的でした。

 そしてそれから現在に至るまで33年間、私は毎朝鏡を見て自分に問い掛け
てきました。
「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やろうとしてい
ることを私は本当にやりたいだろうか?」と。


 その答えが「ノー」である日が続くと、そろそろ何かを変える必要があるとわ
かります。


 
自分がそう遠くないうちに死ぬ意識しておくことは、私がこれまで重大な選
択をする際の最も重要なツールでした。


 
ほとんどのものごと、外部からの期待、自分のプライド、屈辱や挫折に対する
恐怖、こういったもののすべては死に臨んでは消えてなくなり、真に重要なこと
だけが残るからです。
自分も死に向かっているという自覚は、私の知る限り、
かを失ってしまうかもしれないという思考の落とし穴避けるための最善の策で
す。

(中略)

 誰でも死にたくありません。たとえ天国に行きたいと願う人でも、そこに行くために死にたいとは思いません。しかし死は、私たちすべてが共有する行き先で
す。かつてそこから逃れた者は1人としていません。そしてそれは、そうあるべき
ことなのです。

 はおそらく、生物にとって最高の発明です。

 それは生命にとって、古いものを取り除き新しいもののためための道開いて
れる変革の担い手です。


 
今、「新しいもの」とはあなた方です。しかしそれほど遠からぬうちに、あなた方
もしだいに「古いもの」となり、取り除かれる日が来ます。


 
ドラマチックな表現で申し訳ありませんが、これが真実です。

 
あなた方の時間は限られています。他の誰かの人生を生きて無駄にしてはい
けません。ドグマにとらわれてはいけません。それは他の人たちの思考の結果と
ともに生きることだからです。他人の意見の雑音によって自分の内なる声が掻き
消されてしまわないようにしてください。


 
そして最も重要なことですが、あなたの直感に従う勇気をもってください。

 
心や直感は、あなたが本当は何になりたいのかすでに知っています。他のこと
は全て二の次です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・以上、上記youtube上の日本語訳より・・・・・・・・・・・・・・・・

vol.17  2012年1月3日(火)
 
<2012/1/3「政府の「事故収束」宣言波紋」毎日新聞朝刊より>
 野田佳彦首相が昨年12月16日の記者会見で「発電所の事故そのものは収束に至った」と宣言したことに波紋
が広がっている。「収束」宣言の背景には、昨年中に除染や避難区域見直しの方向性を示すことで、先が見えな
い状況に不安を抱く被災地の心情に配慮する狙いがあったが、福島県議会は27日、撤回を求める意見書を全会
一致で可決。県内の自治体首長の反発も強く、逆効果となった形だ。政府関係者は「どこかで節目をつけないとい
けなかった」と話す。 (笈田直樹)

 政府は節目をつけたかったようですが、避難生活が長期化する中、放射性物質拡散の新たな判明や「どこに燃
料があるのか、原子炉をあけてみなければ誰もわからない(細野環境相)」「燃料の場所がどこにあるにしても、冷
却されているという状態(細野環境相)」という説明などから、節目をつけることに違和感をおぼえる被災地住民が
大勢いらっしゃるようです。

 私たちの人生には多数の節目があります。

【人生における節目(例)】
出生・誕生、七五三、入園式、入学式、進級、卒業式、成人式、結婚、出産、銀婚式・金婚式、離婚、還暦(61
歳)・古希(70歳)・喜寿(77歳)・米寿(88歳)、隠居、死、葬式、法要(百ヶ日・一周忌・三回忌等)

 日本における民俗学の開拓者である柳田國男は節目について着目しました。フランスの文化人類学者であるア
ルノルド・ヴァン・ジェネップは、人生をある時空間から他の時空間へ移動する連続と捉え、そこにはたくさんの儀
式(節目)が用意されているとして、それらの儀式を通過儀礼の概念としてまとめました。

 節目、通過儀礼、洋の東西を問わず、人生には、日々の生活には、人生や日々の生活を区切るモノ・コトがあ
り、それらが「人生や日々の生活にリズム・勢いをつける」などの同様の概念を形成するに至っているのは興味深
いことです。

 節目は人材育成、キャリア論、リーダーシップ論等におけるキーワードの一つでもあります。

 節目よりも、トランジション(transition 転機、移行(期))の方が、人材育成関連業界では認知されている言葉
なのかもしれません。

 仕事、ビジネスにおける節目、トランジションにはどのようなものがあるのでしょうか。

【仕事、ビジネスにおける節目・トランジション(例)】
昇進・昇格、異動、辞令、離職、転職、退職、一皮むけた経験、売上●●億突破、新事業成功・失敗、先代社長から
二代目社長への事象承継

 William Bridgesは、人それぞれ千差万別のトランジション(transition 転機、移行(期))を「終焉」「中立圏」
「開始」のパターン、プロセスとして理論化しました。

 「何かが終わってから(終焉)、何かが始まる(開始)」は分かりやすいですね。

 Bridgesは「終焉」と「開始」の間に、「終焉」とも違う、「開始」とも違う、”どっちつかず”の、”中途半端”な、”宙ぶ
らりん”な、”あいまい”な、「中立圏」というプロセスを設けました。

 「中立圏」において、人は、「失う(った)もの・こと」、「もう二度と手に入らぬもの・こと」への愛着、郷愁、思慕、懐
かしさ、有用さ、そして「もしかしたら再び手にすることができるかも・・・」との淡い期待等と向き合い、もがき、苦悩
します。もがき、苦悩しながらも、徐々に、「それでも、踏ん切りをつけねば次に進めない」との意識が芽生え、覚悟
し、そして”本当の”「開始」プロセスに入ります。「中立圏」は「開始」に向けての(積極的な)準備期間です。もがく
ことなく、苦悩することもない「開始」は、実は”うわべの”「開始」に過ぎないのでしょう。”うわべの”「開始」は”うわ
べ”ですから、再び「中立圏」に戻ったり、「終焉」以前に戻ったりする恐れがあります。

 Bridgesの理論を参考に考えますと、被災地住民の皆さまが”本当の”「開始」のプロセスに入るには、まことに
僭越ながら、私などには想像も及ばぬほどの大きくかつ壮絶なもがきや苦悩が必要なのでしょう。

 被災地住民の大勢の方々が政府の節目づけに違和感をおぼえる要因の一つに、被災地住民の方々が”本当
に”「開始」するにあたって課せられた大きくかつ壮絶なもがきや苦悩に対する政府の感受性の鈍さがあるように
思えます。

 仕事柄、節目を迎えている、あるいは迎えようとしているリーダー、マネジャーなど多くの様々なビジネスマンとご
一緒します。2012年、もがき、苦悩されている彼ら・彼女らに対してより的確な支援ができればと考えています。

 そのためには、
 『私は、彼ら・彼女らのもがき、苦悩への感受性をより高める必要がある』
 『私自身、もっともがいたり、苦悩したりする必要がある』

 正月は多少時間的な余裕があります。実家で古いアルバムを見たり、初売りで賑わうショッピングモールの雑踏
に出かけたり、新聞をいつにもましてつぶさに読んだり、いろいろしておりましたら、こんな結論に達しました。

 昨年の4月、母が他界しました。
 父一人では生活が難しくなりました。
 実家は売却することとしました。
 たくさんの思い出に満ちた実家です。
 中立圏に長く留まることになりそうです。
 
【参考】

節目 ふしめ
竹や木材の節のある所。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

節目 せつもく
①草木の節ふしと木目もくめ。転じて、物事のくぎりや条理。②小分けした一々の箇条。細目。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

ふしめ【節目】
1 <木などの> a knot.
2 <人生の区切り目> a critical juncture; a turning point
¶人生の節目に  at important [major, decisive] (turning) points in (a person's) life.

[新英和(第7版)・和英(第5版)中辞典 株式会社研究社]

通過儀礼

人の一生に経験する、誕生・成年・結婚・死亡などの儀礼習俗。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

儀礼
社会的慣習として、形式を整えて行う礼儀。礼式。「―的」
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

通過儀礼a rite of passage; an initiation ceremony
[新英和(第7版)・和英(第5版)中辞典 株式会社研究社]

transition

① 移り変わり, 移行, 変遷, 変化
 a period of transition=a transition period  過渡期
 a sudden transition from autocracy to democracy  独裁制から民主制への急激な移行.
②過渡期, 変遷期, 変わり目
 in transition  過渡期にある.
③(話題を変える時の)前後を接続させる語[句, 文].

[新英和(第7版)・和英(第5版)中辞典 株式会社研究社]

けじめ

①区別。わかち。わけめ。②道徳や慣習として守らなければならない区別。「長幼の―」「―を守る」
③へだて。しきり。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

vol.16  2012年1月2日(月)

 昨年(2011年)の4月、太宰府(福岡県)で母が亡くなるかどうかという頃、私は母の病床を離れ東京に戻り、ある会合の席上で、その会合を総括する言を述べていました。


 先に申し上げておきますが、「身内が亡くなる時であっても仕事に精を出すのがプロである」とか、「いやビジネスマンだったら当然だ」とか、「そこまでする意味のある仕事なんてない」とか云々について本コラムで述べたいのではありません。

 「いろいろ事情があるんだろうよ・・・」

 大人はそういう言い方をする。
 なぜか?


  人間一人が、この世を生き抜いていこうとすると、他人には話せぬ(とても人には言えないという表現でもいいが)事情をかかえるものだ。他人のかかえる事情は、当人以外の人には想像がつかぬものがあると私は考えている。

 伊集院静(2011)「妻と死別した日のこと」『大人の流儀』株式会社講談社pp.94

 
人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きている

 伊集院静(2011)「妻と死別した日のこと」『大人の流儀』株式会社講談社pp.98

Amazonロゴ小

大人の流儀←click!

たしかに、ひとそれぞれに、当人以外のひとには想像もつかぬ、他人には話せぬ事情があるように私は思います。傍から見れば、特にビジネスの場では、いろいろあっても、平然と生きている(平然と生きているかのように見える)人が大半ではないでしょうか。

 私の人材育成サービス提供の基本は、「カスタマイズ戦略に軸足を置き・・・」です。

http://www.kkkiduki.jp/article/14218579.html


 2012年度の構想を練るにあたっては、「実践、具象化に重きを置きたい」との考えをベースとしました。

http://www.kkkiduki.jp/article/14225455.html


 これらの人材育成サービス提供の基本や2012年構想のベースの原点(根っこ)には、「ひとそれぞれに事情(例:生病老死、自分固有のパーソナリティ、培った信念や能力、直面している問題・課題・悩み・葛藤)がある」「事情がありつつもひとは平然と生きている」との現状認識が、そして「との多様性を尊重したい」との想いがあります。

「ひとの多様性を尊重したい」という想いは、様々な組織やひとと仕事をご一緒するなかで人の様々な成長パターンや成長のきっかけなどを目の当たりにしたこともあるためか、人材育成に関する考え方や方法理論化抽象化、つまりいくつか(数種類)の軸や観点から「要するに●●●●ということだ」と述べることに対するためらい後ろめたさを私に感じさせます。


理論化・抽象化の重要性は、理性では、重々理解しています。

しかし、私の感情は、「組織、人は、特に人材育成は、理論化・抽象化するにはあまりに複雑すぎる」、「人は深遠であり畏敬・畏怖の念を抱くべきだろう・・・。そんな人というものの育成に関して理論化・抽象化するにはよほど注意が必要だ」と声を張り上げます。

 また、「ひとの多様性の尊重」という考え方、言葉の響きは、極めて道徳的であり、立派であるように私は感じるのですが、はたして”生き馬の目を抜く””優勝劣”のビジネスの世界おいて、「ひとの多様性を尊重すること」という経営がはたして有効なのか。役に立つのか。 

「木下、お前は、経営が大事なのか?それともヒトが大事なのか?」
 
自問自答する局面が増えました。
 
答えを探すのに右往左往することもままあります。

 「人材育成は、理論化・抽象化するにはあまりに複雑すぎる」という内なる声といい、「経営が大事なのか?それともヒトが大事なのか?」との自問自答に右往左往していることといい、経営改善・革新、人材育成を生業として経営(人材育成)コンサルタントを自称しているというのに困ったものです。

2012年元旦の朝、一人でも多くのリーダー人材の育成に貢献することができるよう、「ひとの多様性を尊重したい」との意識、いえ衝動を原動力として、2012年を駆け抜けたいと思いました。

vol.15  2011年12月31日(土) 

 2011年も、今日一日を残すのみとなりました。

 コラム「2011年を振り返り2012年の構想を練る その1」の続編の位置づけで、
「私の5大ニュース」「実感、決意等」を挙げてみたいと思います。

 ”私の”がミソです。 
あくまで「”私の”5大ニュース」です。

 「コラム 2011年を振り返り2012年の構想を練る その1」
 http://www.kkkiduki.jp/article/14219581.html

 と同様に、「断定的な記述であるのに根拠は示されていない」など、気になる
方がいらっしゃるかもしれません。
 「私(木下)が私自身の持論を検証したい」「そのために持論をアウトプットす
る」「アウトプットの場として本コラムを使う」ことなどに鑑みご容赦ください。

【私の5大ニュース】

3月 東日本大震災(含、原子力発電問題)
 3/11、未曾有の天災、そして人災が発生しました。
 被災された皆様に心からお見舞いを、また復旧・復興をお祈り申し上げます。

 4月 母 永逝 
 4/3、母がこの世を去りました。

7〜10月 オープンセミナー(研修総点検セミナー)の開催  
  延べ4回、140名余りの方々にご参加いただきました。

  http://www.kkkiduki.jp/article/14158136.html

10月 HP『木下耕二ラーニングコラム』の立ち上げ 
「いつか、いつか・・・」と先延ばししていたことに着手、成果物を作りました。

9月〜 運動
 定期的に、適度に、ウォーキングしたり、スポーツジム(温泉施設有り)に通っ
 たりするようになりました。

次点
1〜12月 業績
1〜12月 心理学の学習7月     30周年記念祝賀会
             http://www4.synapse.ne.jp/kyokushin/hsrc/2011/2011.07.03.30th-new.html  

 

【実感、決意等】

● ”当たり前のこと”なのでしょうが、今さらながら、強く実感しています。
自分は(も)死ぬのだ
 「人生は永遠に続くものではなく、限られた時間においてのみ存在し、そして
 消滅するものである」
 「自分や大切な者が今死んだとしてもまったく不思議なことではない」。
 
●今さらながら、腹落ちしたように思います(といっても、まだまだです・・・)。
 「人生の最後の日から逆算する」
 「目的・目標から逆算する」
 
● 「今というこの瞬間大切にしよう・感謝しよう」とあらためて思っています。
 
●以下の言葉は、”意識して”発することにしようと考えています。
 
 ※「”意識して”発する」の意は、「明確に意識して発する」、「意識せずに(よ
   く考えもせず、惰性で、無意識に)発することは慎もう」です。
   「積極的に発する」といった類の意ではありません。
 「分らない・・・」
 「考えられない・・・」「考えても意味がない・・・」「考えても無駄だ・・・」
 「できない(やれない)・・・」「やっても意味がない・・・」「考えても無駄だ・・・」
 「想定外である・・・」 「結論を出すのは先でいいのではないか・・・」
 「あの時はあれ以上のこと(例:予見、実行)はできなかった・・・」
 「私には責任がない・・・」
 
「時代、国家、組織、マーケットに対する自分(木下耕二)の洞察力、予測力 
はそこそこ的
を射ている(大きく軌道修正する必要はない)」と自信を深めました。
 
●「自分、家族など、大事な人たちの安全、未来は、自分が守らねばならない
 (他者を軽軽に当てにしない・任せない・信じない)」と意が固まりました
 
意思決定や判断の軸がかなり明確になったがします。

  大儀があるならば”やる””力を入れる”、そうでないなら”やらない””力を抜く”。

 に適うならば”やる””力を入れる”、そうでないなら”やらない””力を抜く”。

 大勢に影響するならば”やる””力を入れる”、そうでないなら”やらない””力
 を抜く”。

 ※川の水は途中で渦を巻いたりしていて、ちょっと見ると元に戻るように見え  
 
るけれど、結局、海に流れ込む。そういう大きな流れを見ていればいい。

 「コラム 実をとる!アップルを目指さない・・・」 
 http://www.kkkiduki.jp/article/14219824.html

 大義や理は、また何が大勢に影響するかの判断根拠は、組織や個人によっ
て違います。

 「木下耕二、お前の大義とは一体何なのか?」
 「木下耕二、お前の理とは一体何なのか?」
 「木下耕二、お前は何をもって大勢への影響の有無、大小を判断するのか?」  


 意思決定や判断を行う場合、上記の問いを自身に投げかける習慣が身につ
きました。2012年も自問自答を続けます。

不透明・不安定・不確定要素が減少し、やるべきこと・やりたいこと「シンプ
 ルになった」、「すっきりした」、「分かりやすくなった」、「(より)明確になった」
 という気がします(やる・やらないに関する判断・意思決定の迷いが減った
 うに感じます)。

 そのためか、やるべきこと、やりたいことに邁進・専念できるようになりました。

学習の重要性を確信しました。死ぬまで学習し続ける所存です。

理論化抽象化は重要です。具象化実践も重要です。
 どちらにも取り組みますが、心持、実践、具象化に重きを置きたいと考えています。


●「ポジティビリティを大切にし、一方でネガティビリティも大切にするべきだ」と
 認識を新たにしました。

ネットを使って発信することおよびそのツール・手段の重要性・将来性、効果
 をあらためて再認識しました。

運動の効用、留意点をあらためて再認識しました。

はっきり意見したり、主張したりする効果やメリット、留意点(タイミング、コン フリクト対応等)を再認識できました。

●「自分は他者からどう見えているのか?」という自問自答によって、
他者の視 
点からの自分(木
下耕二)のイメージをはっきり意識できるようになったと思います。

●人の、少なくとも私の、パーソナリティは幼少のころからそれほど変化しない
 ことを実感しています。幼少の頃のパーソナリティは大事にしたいと新たな
 認識を持ちました。


●「持って生まれたもの」と「学習して身につけたもの」「役割上のもの」を統合
 することに対して
しさを感じるようになりました。


セルフイメージが自分の中で確立されつつあるように感じていいます。

人(脈)セーフティネット構築の上で極めて有効であると確信しました。私
 が妻や子供に遺してやるべきものの一つです。

●妻と子をはじめ、支えてくれる方々の存在の大きさ、ありがたさをつくづく感
 じました。


「手放す」、「捨てる」、「別れ」などについてどのような概念があるのか。どの
 ような概念が今後の人生において有効か。2012年に向けて整理、明らか
 にしたいと思っています。


【補足−言葉の定義−】

大義①重要な意義。大切な意味。

②人のふみ行うべき重大な道義。特に、主君や国に対してなすべき道。  

「―にもとる」
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

理 ことわり
(物事の理非を分かち定める意から。→断り)

①道理。条理。  
万葉集5「世間よのなかはかくぞ―」。平家物語1「盛者必衰の―をあらはす」

②格式・礼儀にかなっていること。  
欽明紀「新羅―無し」

③理由。わけ。  
源氏物語須磨「その―をあらはにえ承り給はねば」

④当然のこと。もっともなこと。  
源氏物語桐壺「人の御心を尽し給ふも、げに―と見えたり」

⑤(副詞的に用いて) もちろん。無論。  
枕草子262「わが得たらむは―、人の許なるさへ憎くこそあれ」

[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

道理
①物事のそうあるべきすじみち。ことわり。  源氏物語帚木「世の―を思ひとりて」。「そんなことが許される―がない」
②人の行うべき正しい道。道義。  「―にはずれた行為」
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

大勢 たいせい
①大きな威勢。大きな権勢。  太平記12「折伏とは―忿怒の形を現じ刑罰を宗となす」
②流動していく物事の、おおよその形勢。特に、世のなりゆき。天下の趨勢。  
「―に抗する」「―には影響ない」

[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

理論 

①(theory)
ア)個々の事実や認識を統一的に説明することのできる普遍性をもつ体系的知識。

イ)実践を無視した純粋な知識。この場合、一方では高尚な知識の意であるが、他方では    無益だという意味のこともある。
ウ)ある問題についての特定の学者の見解・学説。
②論争。〈日葡〉

[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

抽象(abstraction)
事物または表象の或る側面・性質を抽き離して把握する心的作用。その際おのずから
他の側面・性質を排除する作用が伴うが、これを捨象という。一般概念は多数の事物・
表象間の共通の側面・性質を抽象して構成される。←→具体。

[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

vol.14   2011年12月26日(月)

 12/22の夜、長男(小学校5年生)が玄関ドア(の外側)に張り紙を貼りました。
  『2011サンタさんへのお願い』 ← Please Click !

 彼は大まじめです。繰り返します。彼は大まじめです。

  世の中の子供はサンタクロースの存在をどの程度信じているのでしょうか。

 バンダイナムコゲームズとネットマイルの調査によると、クリスマスプレゼントを誰からもらうかについて小中学生に質問したところ、「サンタクロース」が全体の63.5%と最も多く、次いで「お母さん」が56.4%、「お父さん」が50.8%と続いたそうです。学年別でみると、「サンタクロース」は小学校低学年、中学年で8割を大きく超えましたが、中学生になると“親”、特に「お母さん」と回答する子どもが約7割と一気に増えます。
 『小・中学生を対象とした『クリスマス』についてのアンケート調査 バンダイ等』 ← Please Click !


 思い起こしてみれば、長男は、3歳頃、月に人格があると思っており、月を横眼で見な
がら、月と競争するかのように走っていました。
 長男は「月は速いな〜」と言っていました。
 そりゃそうですよね。どれだけ速く走っても、月はいつまでも長男にぴったり平走する
かのように長男の視野の一定の位置にありますから(^.^)。


 つい最近、長男は真顔で言いました。「ワニは哺乳類である」と・・・。

 
 長男は、「サンタクロースは現実に存在している(そして、クリスマス、世界中の子供
にプレゼントを配って回っている)」、「月には人格がある」、「ワニは哺乳類である」、と

素朴に思っています。

 

 教育などを通じて科学的に教えられたのではなく、自分で、自然に、いつのまにか持っ
た理論のことを『素朴理論』といいます。

 素朴理論には、「適切な素朴理論」と「誤った素朴理論」があります。
    ※素朴理論は「裏付けのない」「思い込んでいる」等の類の言葉で表現されているこ
    とが多いように私は認識しています。この点から言うと、素朴理論=「誤った(素朴
    理論)」となります。しかし、私は、状況に適応する上で有効な素朴理論も多いこと
    から、あえて「適切な(素朴理論)」といういう表現を用いて、素朴理論を「適切な素
    朴理論」と「誤った素朴理論」の2つに分けて表現しています。、

 子供であれば、「誤った素朴理論」も可愛いものです。

 子供の「誤った素朴理論」の多くは、いろいろな学習経験を経る過程で、いずれ「適切な素朴理論」に置きかえられていくことでしょう。

 ところで、大人は素朴理論を、それも「誤った素朴理論」を持たないのでしょうか?

 あなたはいかがですか?

 重い球の方が軽い球より早く落ちる。
 こう信じている大人は思いのほか多いそうです。

 「誤った素朴理論」を持つ大人は結構いるということです。
 ※ちなみに、私は「重い球が落ちる速さと軽い球が落ちる速さは同じ」と認識していま
   す。しかし、その理由は説明できません・・・。

 母が脳出血で倒れ、脳の働きが失われ、しかし人工肺のおかげでかろうじて肺は動き、
また母の生命力によって心臓が動いている状態(脳死)となって一週間が過ぎた頃、父は
「お母さんはこんな状態を望んでいないはずだ」「安楽死させてやりたい」、「人工肺を自分が止めることもやぶさかでない」と言いました。父の心情は痛いほど、痛すぎるほど、分かります。「私は人工肺を止めることができる」「それが母のためである」という素朴理論を父は過去のそして母が倒れてからの経験によって有するに至ったのでしょう(感情的な動揺
という要因もあったと思います)。
 父の「人工肺を自分が止めることもやぶさかでない」という素朴理論が「適切な素朴理
論」であったのか、「誤った素朴理論」であったのか。いろいろな見解があるかと思います
が、もし父が人工肺を止めていたら大変な問題が発生したことは間違いありません。

 「親族に不幸が続くのは先祖の供養を十分やっていないからだ」「不幸が続かないため
に先祖を十分供養しよう」と思っている方を存じています。

 子供の「地球は平ら(地球は丸くない)」のような「誤った素朴理論」は可愛いで済ませら
れることも多いですね。

 
しかし、大人の「誤った素朴理論」は大きな問題を引き起こしたり、拡大させたりすることもあり、可愛いでは済ませられないことも多々あります・・・。

 あなたのビジネスの場に、職場に、「誤った素朴理論」を持つ方はいらっしゃらないでしょか。

 シェアアップすれば収益性は高まる
 CSを高めるためESが重要である
 部下の問題点を突くことが上司の務め
 営業は売り込んではならない
 ビジネスは逆算だ 

 これらは「誤った素朴理論」でしょうか? それとも「適切な素朴理論」でしょうか?


 素朴理論は、たとえそれが「誤った素朴理論」であっても、その素朴理論を持つ方が、その方が認識している現実に関する因果関係等を、スムーズに、分かりやすく、理解する
で大きな役割を果たしています

 素朴理論は、複雑な現実のメカニズムをその持ち主にうまく説明してくれるので
す。

 ですから、「誤った素朴理論」を持つ方が、他の方から「そうではないんだよ」と言
われても、「誤った素朴理論」を持つ方はそう簡単には「はい、そうですね」と言うことはなかなか
できません


 あなたは、素朴理論をお持ちですか。意識されていらっしゃいますか?

 あなたの素朴理論は、「適切な素朴理論」ですか。それとも「誤った素朴理論」ですか

 あなたは、「誤った素朴理論」をもつ組織構成員に対して、どのようにして「適切な理論」を身につけさせていらっしゃいますか?


 長男はことしもサンタクロースからプレゼントを受け取りました。
 サンタクロースに関する長男の素朴理論を、彼がその素朴理論に矛盾する現象(anomaly)に気づくまで、そっと、見守ってあげたいと思います。

vol.13  2011年12月25日(日)


 私は、「企業の人材育成は経営に役立つべき(資するべき)」と強く考えています。
 http://www.kkkiduki.jp/article/14030753.html
 

 経営のあり方・やり方は組織によって様々です。

 本コラムでは、経営に関する入交昭一郎氏(旭テック会長)のお考えから私が再確認さ

せていただいたこと、興味を覚えたこと、そして検証したいと思ったことを、また入交氏の
インタビュー記事をご紹介
します。

 

【私が再確認したこと・興味を覚えたこと・検証したいと思ったこと】

普通の技術コモディティ日本では成り立たなくなる

新興国の市場を取りに行くしかない。TPPへの参加は当然。

★デジタル化は脅威。しかし、デジタル化が困難&高品質であれば勝負できる

日本の製造業は世界各地に根を下ろし世界中からおカネを日本に集める装置になれ
   ばよ
い。

日本の製造業の選択肢は五つある。どれもやさしくないが、どれか一つに決めないと。

★国内でもの作りに携わる人、一人一人の質を高めないといけない。そのためには、
   弟
制度でたたき上げていくしかない。一番の心配は、若い人たちのマインドである。

日本の強みは、細部にこだわり現場ですりあわせて、ボトムアップ出来栄えのいい
   製品にすること。日本は、細部にこだわって頑張るしかない

部品で細かく稼ぐ

名を取らずに実をとるアップルを目指さないのが日本の製造業の生きる道。

トップは決断においてリスクを取ることも必要。

川の水は、結局、海に流れ込む。そういう大きな流れを見ていればいい。


【入交昭一郎(2011/12/24)「製造業から見た日本と世界」日本経済新聞】
(聞き手・尾沢智史、畑川剛毅)
※「です・ます」調を「である」調にするなど一部修正させていただきました。

●日本は市場として縮小し、利益を上げることが非常に難しくなっている。

●加えて、新興国との競争がある。原材料、人件費、土地、電力、工場建屋、製造設備、
 新興国の方が圧倒的に安い。国内で作るものは品質で差をつけるしかないが、追い上げ 
は急である。普通の技術で、汎用品(コモディティ)に近いものは日本では作っていけなく 
なる。

●デジタル化の影響は大きい。高精度で加工する場合、昔は工作機械と腕の立つ職人が必 
要だった。ところが、コンピューター数値制御の工作機械が導入されると、名人でなく
とも 
よくなる。設計ソフトを使うと大学を出たばかりの人間でも設計できる。

●鋳物のようにデジタル化しにくいものもある。温度、湿気、砂の粘土など何百というフク 
ターが絡み合っているので数値ができない。テクノメタル(旭テック子会社)は鉄鋳
物でも 
一番難しいディーゼルエンジンのシリンダーブロックを作っている。不良率が低く
、値段は 
高いけれど、不良品を捨てるコストを考えればはるかに安上がりだということで
、どんどん 
海外からの受注が増えている。

●米国や欧州でも先進国の市場は自国産業にとって収益源になりにくくなっている。しかも、 
常に海外との競争にさらされる。だから新興国の市場を取りに行くしかない。その意
味で 
もTPP(環太平洋経済連携協定)への参加は当然だと思う。

●生産している場所が重要なのか、それをコントロールしている場所が重要なのか。

●海外で車を作るホンダやトヨタも「日本の製造業」である。海外で生産した製品を海外の市 
場に売って、その利益を日本に持ってくる。国内の生産が厳しくなっても、日本の製
造業が  
世界各地に根を下ろして頑張れば、世界中からおカネが集まってくる。企業は、そ
の装置 
になればよい。

●21世紀の日本人は工場も働き手も海外に出て出稼ぎすべき。

●日本の製造業は五つの選択肢のどれかを選らばなければならない。どれもやさしいこと
 
ではないが。

 1.ある分野に特化して、国内徹底的にお客さんに奉仕して今ある顧客を離さない
   京都のお茶屋さんのような堅実なビジネス。

 2.国内狭い分野に特化すると同時に高い技術力グローバルな競争力を持つ。小金
   
井精機という会社が典型で、F1のエンジンの特殊な部品を超高精度で仕上げる技術
   
がある。

 3.一番典型的なもの。国内に製造拠点は残しながら培った技術を持って海外へ出て
   
いく。旭テックはこれである。

 4.国内はマーケティングや開発に特化し、生産はすべて海外でやる。ユニクロのように。

 5.世界のどこにもない新しいものを作りだす。これは天才が出てこないとできない。

●国内でもの作りに携わる人は減る。だから、一人一人の質を高めないといけない。
●そのためには、徒弟制度でたたき上げていくしかないのですが、いまの日本の若い人は
 怒られたことがないし、あまり海外に行くことを好まない。一番の心配は、若い人たち
の 
 マインドである。

●最後に残る日本の強みは、細部にこだわり、現場ですりあわせて、ボトムアップで出来栄 
 えのいい製品にすること。細部を練って積み上げていく力は断然強い。

●でもこれは同時に欠点でもあって、すぐに細部に目が行くので全体を構想できない。部品 
 点数10満点までのものを作るのは得意でも、スペースシャトルのような巨大なシステ
ムを 
 作るのは向いていない。

●欧米の人間は、まずコンセプトから考える。大枠を決め、細部に下していく。アップルはそ 
 の典型で、iPHONEやiPADのように、まずコンセプトありきで製品を作っていく。

●日本は、細部にこだわって頑張るしかない。部品で細かく稼いでいく。航空機でいえば、 
 ボーイングやエアバスにはなれなくても、中小規模のシステムや大きなシステムの中の
部 
 品づくりなら日本は世界最強である。そこに特化する。名を取らずに実をとる。アップ
ルを 
 目指さないのが日本の製造業の生きる道です。

●心配なのはトップの決断力である。思いきった投資がなかなかできない。
●日本企業は、バブル崩壊で苦しい状況を経験しすぎて、いかにリスクを減らすかが最優
 先課題になってしまった。リスクを取ることも必要。

●川の水は途中で渦を巻いたりしていて、ちょっと見ると元に戻るように見えるけれど、結局、 
 海に流れ込む。そういう大きな流れを見ていればいい(孫正義氏の言葉)。

●今は苦境の国々も、これから苦境に入る国々も、人はみな豊かさや安定を求めて必ず立
 
ち直る。日本もそうだった。そこを見失わないで仕事を続けていくことが、企業人にとって 
 一番、大切なことだと思う。

著書

2023年4月発売 
ダイナミック・ケイパビリティのフレームワーク: 資源ベース再構成の組織能力
http://amazon.jp/dp/4502450316
発行所:中央経済社 
統合的な調査・分析の枠組みに基づき、グローバル・ニッチ・トップ企業のM&Aに係るダイナミック・ケイパビリティの実相を、ミドルマネジメントの観点から探究

著書

2014年9月発売 
仕事の基本(経営コンサルティング・ノウハウ2)
http://amazon.jp/dp/4502114219
発行所:中央経済社 

マネジメントの振り返り(内省/ リフレクション)に役立つ!