Vol.30 2012年3月4日(日)
母を亡くし、そして父も亡くし、酔いどれのおじと駅の時計台で暮らすヒューゴにとって
の生きる糧は、父が生前心ときめかせた、精巧な、壊れた機械人形です。
いえ、ヒューゴの生きる糧は、壊れた機械人形(というモノ)ではなく、その壊れた機械
人形を”修理する”という行為です。
修理という行為にヒューゴは没頭しました。修理という行為に没頭することによって、
ヒューゴは一時の間、日々の無力感ややりきれなさ、寂しさをから遠ざかることができ
たのではないでしょうか。没頭がヒューゴのモチベーションの崩壊を食い止めたのでは
ないでしょうか。
ヒューゴの没頭ぶりを見ながら、フロー経験について考えていました。
フロー経験 flow experience :楽しさの一側面であり、ある行為に全人的に没入してい
る時に感じる包括的感覚のこと。熱中している時に感じる状態の感覚。チクセントミハイ
(Csikszentmihalyi)の内発的動機づけ研究において提唱された用語であり、その特性
として、行為と意識の融合、注意の集中、自我の喪失、環境を支配している感情、自己目
的性などが上げられる。スポーツ、ゲームなどの内発的動機づけに基づいた行動の中で
経験されることが多い。
中島義明他(編)(1999)『心理学辞典』有斐閣pp.764
フロー経験(flow experience)には、次の特徴がある。(1)行為と意識の融合、(2)限
定された刺激領域への注意の集中、(3)自我の喪失や忘却、および世界との融合感、
(4)自分の行為や環境を自ら支配できているという感覚、(5)首尾一貫した矛盾のない行
為が必要とされ、そこに明確なフィードバックがあること、(6)自己目的的、つまり他の目的
や外発的報酬のためにそれをしているのではないこと。
経営行動科学学会(編)(2011)『経営行動科学ハンドブック』中央経済社pp.240

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昨今、没頭することを妨げる要因が増えたように思います。
・仕事の種類、量の増大。
・検索、メール、携帯電話(スマホ)、フェイスブック、ツイッター等による仕事の中断、
アクセビリティの向上。
・情報過多。
そもそも、多くのリーダー、マネジャーは、その理想とは大きくかけ離れ、多忙を極め、
没頭できる(フロー状態に入れる)状況にないと言われています。
マネジャーの活動には、短時間、多様性、断片的、という特徴がある。その大部分は
実に短時間で、職長は秒単位、経営者でも分単位。行われるべき活動の多様性は大き
く、連続して起こる活動の間にはパターンはない。結果として起こることに些細な利害関
係でもあれば、マネジャーはすばやく頻繁に気分転換しなければならない。一般的に、
マネジャーの仕事は断片的で、中断されるのはあたりまえのことである。
ヘンリー・ミンツバーグ(著)/奥村哲史、須貝栄(訳)(1993)『マネジャーの仕事』白桃
書房pp.85

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自身の、組織構成員のモチベーションを高め、高いパフォーマンスを創出する等の点か
ら、経営者、リーダー、マネジャーにとって、「没頭できる環境を作る(ゾーンに入る)」とい
う能力の重要性がより高まっています。
・自分自身が没頭する。没頭できる環境を作る。
・部下、仲間が没頭できる環境を作る。
「瞑想力」「断る力(勝間和代)」なども、具体的に、状況に応じて、効果的に発揮する
には相当の修練が必要なのでしょうが、「没頭する。没頭できる環境を作る」ための能力
です。
スタッフ
監督・製作:マーティン・スコセッシ
原作「ユゴーの不思議な発明」:ブライアン・セルズニック
キャスト
ヒューゴ・カブレ:エイサ・バターフィールド
イザベル:クロエ・グレース・モレッツ
パパ・ジョルジュ/ジョルジュ・メリエス:ベン・キングズレー
鉄道公安官:サシャ・バロン・コーエン
ママ・ジャンヌ:ヘレン・マックロリー
ヒューゴの父:ジュード・ロウ