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vol.16  2012年1月2日(月)

 昨年(2011年)の4月、太宰府(福岡県)で母が亡くなるかどうかという頃、私は母の病床を離れ東京に戻り、ある会合の席上で、その会合を総括する言を述べていました。


 先に申し上げておきますが、「身内が亡くなる時であっても仕事に精を出すのがプロである」とか、「いやビジネスマンだったら当然だ」とか、「そこまでする意味のある仕事なんてない」とか云々について本コラムで述べたいのではありません。

 「いろいろ事情があるんだろうよ・・・」

 大人はそういう言い方をする。
 なぜか?


  人間一人が、この世を生き抜いていこうとすると、他人には話せぬ(とても人には言えないという表現でもいいが)事情をかかえるものだ。他人のかかえる事情は、当人以外の人には想像がつかぬものがあると私は考えている。

 伊集院静(2011)「妻と死別した日のこと」『大人の流儀』株式会社講談社pp.94

 
人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きている

 伊集院静(2011)「妻と死別した日のこと」『大人の流儀』株式会社講談社pp.98

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たしかに、ひとそれぞれに、当人以外のひとには想像もつかぬ、他人には話せぬ事情があるように私は思います。傍から見れば、特にビジネスの場では、いろいろあっても、平然と生きている(平然と生きているかのように見える)人が大半ではないでしょうか。

 私の人材育成サービス提供の基本は、「カスタマイズ戦略に軸足を置き・・・」です。

http://www.kkkiduki.jp/article/14218579.html


 2012年度の構想を練るにあたっては、「実践、具象化に重きを置きたい」との考えをベースとしました。

http://www.kkkiduki.jp/article/14225455.html


 これらの人材育成サービス提供の基本や2012年構想のベースの原点(根っこ)には、「ひとそれぞれに事情(例:生病老死、自分固有のパーソナリティ、培った信念や能力、直面している問題・課題・悩み・葛藤)がある」「事情がありつつもひとは平然と生きている」との現状認識が、そして「との多様性を尊重したい」との想いがあります。

「ひとの多様性を尊重したい」という想いは、様々な組織やひとと仕事をご一緒するなかで人の様々な成長パターンや成長のきっかけなどを目の当たりにしたこともあるためか、人材育成に関する考え方や方法理論化抽象化、つまりいくつか(数種類)の軸や観点から「要するに●●●●ということだ」と述べることに対するためらい後ろめたさを私に感じさせます。


理論化・抽象化の重要性は、理性では、重々理解しています。

しかし、私の感情は、「組織、人は、特に人材育成は、理論化・抽象化するにはあまりに複雑すぎる」、「人は深遠であり畏敬・畏怖の念を抱くべきだろう・・・。そんな人というものの育成に関して理論化・抽象化するにはよほど注意が必要だ」と声を張り上げます。

 また、「ひとの多様性の尊重」という考え方、言葉の響きは、極めて道徳的であり、立派であるように私は感じるのですが、はたして”生き馬の目を抜く””優勝劣”のビジネスの世界おいて、「ひとの多様性を尊重すること」という経営がはたして有効なのか。役に立つのか。 

「木下、お前は、経営が大事なのか?それともヒトが大事なのか?」
 
自問自答する局面が増えました。
 
答えを探すのに右往左往することもままあります。

 「人材育成は、理論化・抽象化するにはあまりに複雑すぎる」という内なる声といい、「経営が大事なのか?それともヒトが大事なのか?」との自問自答に右往左往していることといい、経営改善・革新、人材育成を生業として経営(人材育成)コンサルタントを自称しているというのに困ったものです。

2012年元旦の朝、一人でも多くのリーダー人材の育成に貢献することができるよう、「ひとの多様性を尊重したい」との意識、いえ衝動を原動力として、2012年を駆け抜けたいと思いました。

著書

2023年4月発売 
ダイナミック・ケイパビリティのフレームワーク: 資源ベース再構成の組織能力
http://amazon.jp/dp/4502450316
発行所:中央経済社 
統合的な調査・分析の枠組みに基づき、グローバル・ニッチ・トップ企業のM&Aに係るダイナミック・ケイパビリティの実相を、ミドルマネジメントの観点から探究

著書

2014年9月発売 
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発行所:中央経済社 

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