TOP

vol.102011年12月23日(金)


 仕事柄、様々な組織の、様々な現状を目の当たりにしているため、組織それぞれに多様な課題が存在していることを絶えず実感しています。

 「組織それぞれに多様な課題が存在している」と書きましたが、あまたある課題も、例えば以下のように「えいっ、やー」と分類することが可能です。

 ・売上の観点からの課題か、費用(変動費・固定費)の観点からの課題か

 ・直接機能に係る課題か、間接機能に係る課題か、統合機能に関する課題か

 ・制度上の課題か、運用上の課題か

 ・すぐにとりかかるべき課題か、当面は放っておいてもよい課題か

 ・手の打てる課題か、手の打てない課題か(これは課題とは呼ばないかもしれませんね)

 etc.


 あまたある課題は、上記のように「えいっ、やー」と単純化できるのですが、課題解決の具体的な打
ち手、その手順・タイミングなど話となりますと、いろいろなパターン、組み合わせがあり、「えいっ、
やー」ともいかないことが増えます。


 私は、標準サービスの提供を自身の人材育成ビジネスの基本とはしていません。
 
組織固有の課題に、特に「えいっ、やー」と単純化できない具体的な打ち手に関するカスタマイズサービスの提供を通じて顧客の期待・要望に応えていく、これが私の人材育成サービス提供の基本
です。


 本HPに、「大切に考えていること」というメニューバーがあります。
 http://www.kkkiduki.jp/category/1537467.html
 この中に「2.カスタマイズへの挑戦」があります。

 主旨は以下の通りです。


・人材育成(研修)の目的・目標は、組織・企業の業容、成長段階、企業を取り巻く環境等が異なる
  ゆえ、組織・企業個々によって異なる。

・組織・企業ごとに異なる目的・目標にフィットする人材育成サービスを提供するために、「組織・企 業ごとに特注品を提供する(カスタマイズする)必要がある」。


 「特注品の人材育成サービスを提供する(カスタマイズする)」を私は標榜しています。

 標準製品・サービスの提供を基本路線とする(標準化戦略)か、カスタマイズ製品・サービスの提供を基本路線とする(カスタマイズ戦略)か。

 提供製品・サービスや生産プロセス等がこの2つでかなり異なります。

 2つのいずれかを志向するかは、人材育成サービスを提供するしないにかかわらず、多くの組織・企業の経営において大きな分かれ道になると言ってもいいでしょう。


 標準化戦略の特徴は以下の通りです。
 ・競合に先じ「標準製品・サービス」を開発する(広く共通に標準的に使われる製品・サービス
を   完全標準品として、また一部セミカスタマイズ製品として提供する)。
 ・製品・サービスのコンセプトを、シンプルに、分かりやすく、顧客に訴求する。
 ・他社が追いついてくる前に多くの顧客に採用してもらう。

 ・規模の経済性、経験効果を利用したコスト・リーダーシップのメリットを享受する。
 ・価格は、市場並み、あるいはそれ以下の安価で提供する。標準価格リストがある。
 ・詳しい内容の訴求は必要としない。
 ・間接チャネル。
 ・見込み生産。少品種大量生産。

 標準化は、仕事、業務改善の基本です。 
 標準化戦略は儲けの基本戦略と言ってもいいでしょう。

 一方、カスタマイズ戦略の特徴は以下の通りです。
 ・顧客の事情を知り尽くす。

 ・製品・サービスを顧客の特定のニーズに合致させる(個別ニーズに合わせたテーラーメードの   製品・サービス、特注品を提供する)。
 ・価格は、市場平均以上で設定し、収益を確保する(平均以上での設定ができない場合は、高   収益を確保するのは難しい)。
 ・顧客ニーズへの対応度と対応の困難度によって顧客ごとに異なる価格で提供する。
 ・製品・サービスについては内容の細かな、詳しい訴求が必要。
 ・直接チャネル。
 ・受注生産、多品種少量生産。

 カスタマイズ戦略は、特注志向が強い業界では、有効な戦略です。

 実際のところは、人材育成サービスの提供組織・企業を含め、多くの組織・企業は、標準化戦略、カ
スタマイズ戦略のどちらかの戦略に軸足を置きながら、いずれの戦略も採りいれて経営しています


 「まずい」のは、顧客の声に応ずるままにカスタマイズ製品・サービスを野放図に増加させたり、
率アップの名のもと十分な検討もなくカスタマイズ製品・サービスの生産・販売を中止し標準製品・
サービスに切り替え
たりするケースです。前者は経営効率の低下を、後者は競争優位性の低下を招
くリスクを有しています。


 生産工程の変更など社内コンフリクトが伴う意思決定の必要性がある等の要因から、顧客の標準
化志向が強まっているにもかかわらずカスタマイズ製品・サービスに拘泥すること、またこの逆
も、
「まずい」ですね。


 「まずい」状況を挙げましたが、標準製品・サービスの提供で顧客の要望に応えるか、あるいはカス
タマイズ製品・サービスの提供で顧客の要望に応えるかは、
そもそも、どこまでが標準製品・サービ
スで、どこからがカスタマイズ製品・サービスかの区別ははっきりつけられない
ケースが多々あるな
ど、上記の「まずい状況」を改善することは簡単なことではありません。

 
 
本コラムの冒頭、「私は、標準サービスの提供を自身の人材育成ビジネスの基本とはしていませ
ん」と記しましたが、

ニューバー「大切に考えていること」
http://www.kkkiduki.jp/category/1537467.html

「2.カスタマイズへの挑戦」においては、

 ・ 一方で、「組織・企業をよく分かる」、「特注品を提供する(カスタマイズする)」ことは、人材育成  
サービス
提供事業者としてはコストの増加を招く(収益性の低下)。コストの増加は、人材育成
   サービス事業者にとって必須である人材育成に関する学習のための投資の抑制に繋がった
    り、最悪の場合は事業継続の危機をもたらす。

 

との認識を私が有していることも記載しています。

 私は人材育成サービスの提供において、カスタマイズが必要であれば徹底的にカスタマイズする
ものの、必要度が低ければ、カリキュラムの順序や受講者への腑の落としどころを変更するなど
スタマズは可能な限り最小限にとどめ(必要以上のカスタマイズへの安易な取り組みは戒め)、出
来うる限り標準サービスで対応する
ことを心がけています。

 「カスタマイズ戦略に軸足を置きながらも最大限標準化戦略を採りいれる」のが私の人材育成
サービス提供におけるやり方です。

 このあたりのことを、メニューバー「大切に考えていること」
http://www.kkkiduki.jp/category/1537467.html

「2.カスタマイズへの挑戦」では、

・「カスタマイズへの挑戦」の“挑戦”には、人材育成サービス提供事業者として、「カスタマイズとカ  スタマイズがもたらす危機とのバランスをいかにとっていくか」へのチャレンジの意を込めている
 

と表現したつもりです。

 (しかし、いろいろな方から、「あの表現は分かりにくい」との声を頂戴しました
m(_ _)m。)

 

 あなたは、あなたの組織は、人材育成サービスを顧客(受講者、関係部署等)に提供するにあた
り、標準サービスの提供を基本とされていらっしゃいますか(標準化戦略)。それともカスタマイズ
サービスの提供を基本とされていらっしゃいますか(カスタマイズ戦略)。

 その基本戦略は本当に正しいのでしょうか。

 二つの戦略を使い分けていらっしゃるでしょうか。

 二つの戦略のバランスは適正でしょうか。


 顧客(受講者、関係部署等)の声に応ずるがままにカスタマイズ・サービスが野放図に増加して
はいないでしょうか。

 効率アップの名のもと十分な検討もなくカスタマイズ・サービスを標準サービスに切り替えたりし
てはいないでしょうか。


 上記の問いに私が明確な答えを持っているわけではありません。

 いつも悩んでいることを、ただ書いただけです。

 ただまのあたりに見る(そして書く)。

 これが本コラムにおける私のポリシーですから・・・。
 
コラム vol.2 情報発信 マイセオリー(自戒)
 http://www.kkkiduki.jp/article/14150672.html

著書

2023年4月発売 
ダイナミック・ケイパビリティのフレームワーク: 資源ベース再構成の組織能力
http://amazon.jp/dp/4502450316
発行所:中央経済社 
統合的な調査・分析の枠組みに基づき、グローバル・ニッチ・トップ企業のM&Aに係るダイナミック・ケイパビリティの実相を、ミドルマネジメントの観点から探究

著書

2014年9月発売 
仕事の基本(経営コンサルティング・ノウハウ2)
http://amazon.jp/dp/4502114219
発行所:中央経済社 

マネジメントの振り返り(内省/ リフレクション)に役立つ!