vol.20 2012年1月12日(木)
日本には、”さくら”という販促のやり方が存在していました。
さくら【桜】
ただで見る意。芝居で、役者に声を掛けるよう頼まれた無料の見物人。転じ
て露店商などで、業者と通謀し、客のふりをして他の客の購買心をそそる者。
また、まわし者の意。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]
2000年以降に登場した以下の類のマーケティング手法について、
・口コミマーケティング
・バズマーケティング
・バイラルマーケティング etc.
私はその真っ当さ、有効性を、有益性を、事業者という活用する側として、ま
た一人の消費者という活用する側としても、認識していました。
しかし、インターネット、ソーシャルネットワークの普及と共に、そして経営や
商業に係る道徳の荒廃を実感する中で、私は上記マーケティング手法におけ
る”さくら”の存在の胡散臭さ(怪しさ)を強く感じていました。
今では、悲しいことに、ステルスマーケティング という言葉まで存在しています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0
真摯に口コミマーケティング等の啓蒙、普及に取り組まれてきた(いる)方々に
とっては本当に迷惑な話です。
※チャンスでもあります・・・。
”さくら”は”やらせ”の一形態と捉えることもできる気がします。
やらせ【遣らせ】
事前に打ち合せて自然な振舞いらしく行わせること。また、その行為。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]
”やらせ”は、私の認識では、日常、特にビジネスシーンでは、その良し悪し
は抜きに、よく行われています。日本的な行いなのかもしれません。
食べログに端を発する今回の現象を、倫理の点から問題として取り上げる
向きがあります。
倫理
人倫のみち。実際道徳の規範となる原理。道徳。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]
道徳
人のふみ行うべき道。ある社会で、その成員の社会に対する、あるいは成
員相互間の行為の善悪を判断する基準として、一般に承認されている規範の
総体。法律のような外面的強制力を伴うものでなく、個人の内面的な原理。
今日では、自然や文化財や技術品など、事物に対する人間の在るべき態度
もこれに含まれる。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]
そもそもとして、”やらせ(さくら)”を許容していた文化が日本にはありまし
た。今後もなくなるとは思えません。
「何かおかしいな・・・」と感じつつも、「まあ参考程度に使ってみよう・・・」
「それほど大外れすることもないし・・・」という程度での使われ方が『食べロ
グ』の総じての状態であったと私は認識しています。
これらのことから、倫理の問題としてまで今回の食べログ関連の問題を
取り上げることに私は少々違和感を覚えます。
行政による規制強化は必要でしょう。
「何を信じていいのか分からない」と本気でお悩みの方々が、私が想定
した以上に多いようですから。
見えざる手(invisible hand、アダム・スミス)にお任せするには(最終的に
は望ましい状態になるのでしょうが)、一時的にものすごく悪い状態へブ
レてしまう危険性が高い気がしますので。
”さくら”に翻弄されたくないのなら、「何が真実で何がそうでないのか」に
もっと敏感になったり、性悪説の立場からのものの見方をもっと身につけ
たりした方がよい方々もいらっしゃるかもしれません。
性悪説
荀子の性説。人間の本性は悪であるとして、礼法による秩序維持を重ん
じた。孟子の性善説に対立。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]
ネガティブさ(例:悲観的に予測する、用心深さ、問題の指摘)が、生き残っ
たり望む成果を生み出したりする上で、あらためて大切な時代になったと私
は認識しています。
多くの人たちの稼ぎや幸せに大きな影響を与える経営者、リーダー、マネ
ジャーという立場の方々はなおのことではないでしょうか。
昨今の人材育成(研修)において、ネガティブさは、ポジティブさと比較して、
テーマとしても、人材育成の場(研修会場)の雰囲気としても、避けられる(人
気がない)傾向にあるように私は感じています。
私たちはネガティブさともっともっと対峙すべきなのかもしれません。