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Vol.51 2013年4月25日(木)

 新大阪駅で朝食を食べていると妻からメールが入りました。
 『S(私の子供)が「帰りたい」と泣いている・・・』

 Sは、妻とともに、この4月から、十数年暮らした鷺沼(川崎市宮前区)を離れ、室見(福岡県福岡市早良区)での
新たな暮らしをスタートさせました。Sは新たな暮らしにまだ慣れていません。
昨晩、鷺沼にいる小学校時代の友達とスカイプしたことも影響しているのかもしれません。

 
繋がる(スカイプ等する)メリットは山ほどあります。そして、そうとは言い難い重大な負の側面もあるように思いま
す。恩師のO先生は、繋がりたがる私(たち)に、「今後一切繋がらない」と三行半を突き付けました。私(たち)は
目を覚まされました。
 コラム『別れ 学習の支援』 
http://www.kkkiduki.jp/article/14697251.html

 
妻とSはどうして福岡に居を移したのか。
 目的は複数あります。

 目的の一つは、『母との約束を”少しは”果たす』ためです。
 十数年前、私は、福岡から上京するにあたり、『7〜8年で(福岡に)戻ってくる』と母と約束しました。 「約束は守れないだろうな・・・」「でもそう約束しないと母は心の健常さを保てないだろうな・・・」「東京に行きたい(福岡を出たい)・・・」。当時、私はこんな風に、漠然と、思っていました。
 案の定約束は守られることなく、そしてそれでも約束が果たされることへ期待しつつ母は2年前に他界しました。
 母には申し訳なく思います。 基本、悔いてはいません。

 私は今も東京に、妻とSは今は福岡に居ます。
 妻・Sと私は離れ、それぞれの世帯で、この十数年とは多少異なった暮らしを始めました。
 私も、妻も、子も、皆、取り巻く環境が、大なり小なり、変わりました。
 これも、妻とSが福岡に居を移した目的の一つです。

 妻とSと私とで、この十数年間と同じように暮らす日常を、”敢えて”変えることから生ずる効用を、気分を一新することのメリットを、私は強く感じたのです。

 「日常に”敢えて”節目をつける必要性を感じた」と言ってもいいのかもしれません。

 コラムB『もがき苦悩する必要性 節目・トランジション』
 http://www.kkkiduki.jp/article/14226681.html

 日常には、マンネリズム、退屈、活力の低下等のリスクが秘められています。 

マンネリズム【mannerism】
 一定の技法や形式を反復慣用し、固定した型にはまって独創性と新鮮さを失うようになる傾向。マナリズム。
[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

 これらの民俗学者はケ、すなわち普段、ないし日常的という状態はそのまま放置しておくと、だんだん元気がなく
なって枯れてゆく性質のものなのではないか、というふうにかんがえたのです。そんなふうにケが枯れてくると、そ
こに「ケガレ」という状態がうまれます。ケということは気という観念にもつながるのでしょうが、日常性というのはお
たがい体験的にしっているようにおおむね退屈なものですから、だんだん元気がなくなってきます。そんなふうに
元気がなくなった状態、気が枯れた状態がケガレなのです。このようなケガレの状態からは、なんとかして脱出し
なければなりません。その脱出手段として、ハレという場面を用意して、もういちど活力をとりもどそう、というわけで
す。つまり、一種のリフレッシュ運動がハレということだ、とこれらの民俗学者はいいます。このようにハレとケのあ
いだにケガレという観念を導入することで、ケ・ケガレ・ハレというサイクルができあがったのです。

加藤秀俊(1995)『人生のくくり方 折目・節目の社会学』日本放送出版協会pp.9-10 

昨年から今年にかけ、あるクライアントに「今のままでは●●●●となってしまう」「変わるしかない」「変わるなら今
だ」との類のことを、ずっと言ってきました。理解、納得、共感していただくことを試みてきました。そんなこと、私は
偉そうに言えるのか(言う資格があるのか)

。紺屋の白袴※。苛立ちを感じずにはおられません。このような苛立
ちを、この10年あまり、私は絶えず感じています(感じてきました)。積りに積もったこのような苛立ちも、「この十数
年の暮らし(日常)を変えたい」との強い衝動の源泉の一つなのかもしれません。

 ※
紺屋の白袴
 他人のためにばかり忙しくして、自分の事をする暇のないことをいう。
 [株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

 マネジメントディスカバリーのコンセプトの一つに”生まれ変わり”があります
 オープンセミナー マネジメント・ディスカバリー 
 
http://www.kkkiduki.jp/article/14698973.html

 詳細は割愛させていただきますが、マネジメントディスカバリーのコンセプト”生まれ変わり”は、『全く変わる』『仕
切り直し』『自然体』『稼働域の拡大』など多様な概念を含んでいます。

 私は、『生まれ変わりたい』『生まれ変われる』『(少なくとも)生まれ変わる気概はずっと持ちたい』と思っていま
す。また、
生まれ変わるのは、基本「簡単でない」との基本認識を持ちつつも、一方で「ものすごく簡単なことかもしれない」とも思っています。

 Sはこの春から中学生です。疾風怒濤の時代を迎えようとしています。
 Sは、S自身が、私や妻が、Sと関係する方々が好むと好まざるとにかかわらず、意識的に、あるいは無意識であ
れ、環境に適応しようと、あっちこっちにぶつかりながら(不器用に)、実直に、程度の差はあれ、生まれ変わるの
だろうと思います。
 『あっちこっちにぶつかりながら(不器用に)』はSの強みです。この強みを存分に発揮しながら、活かしながら、S
には生まれ変わって欲しいと思います。

 自分らしさを大切にすることも大事ではないか。

たしかに、自分らしさを大切にすることは大事です。 Sの長い人生においてSが経験するであろう環境の厳しさ、環境変化の激しさに視座を置くと、基本、『「自分らし

さ」を大切にする力と同等かそれ以上に、「自分らしさ』を塗り替えていく(=生まれ変わりを継続する)※不器用※
なチャレンジ力※を鍛える方が、これからしばらくの間、Sにとってはより価値があるような気がします。

 ※『塗り替えてい』上でベースとして必要な能力・経験・資源等
    自己効力感、見通しの持ち方、道筋のつけ方、理想像、内省、楽観性、具体策、支援者etc. 
    → 学術上の知見と多少は一致しているかとも思いますが、あくまで木下の経験上の勘(観)です。

 ※『不器用』という言葉に込めた意
    あっちへ行ったりこっちへ行ったり、喜んだり落ち込んだり、三歩進んで二歩さがる

 ※『チャレンジ力』という言葉に込めた意
    生まれ変わるには大なり小なり葛藤や恐れがあり高い崖から翔び出すような気概や勇気、度胸も必要なこ
    とが(往々にして)ある。気概、勇気、度胸が生まれ変わりの鍵を握っていることもある。

 『●●らしさ』を大切にすべきなのか(大切にしたいのか)、『●●らしさ』を塗り替えるべきなのか(塗り替えたいのか)。成果を継続的に手にする上で、組織においても、個人においても、私は重要な問いであるような気がします。

 Sについての言及が続きました。『紺屋の白袴』はまっぴらごめんです(Sに『(父は)紺屋の白袴だ』とは思われ
たなくい)。私がビジネス環境にフィットし続ける、私や妻がSとの関係の良好さを今後も維持する etc.。未来から
逆算的に、目的的に、今の私、今の私や妻を振り返ると、「私は、私や妻は、生まれ変わる必要がある部分も有し
ている」と考えるべきなのでしょう。生まれ変わることを意識して、生まれ変わる具体策を明らかにし、実践し、”(退
屈な)日常”を、大事に、有意義に、過ごそうと思います。

 妻とSが福岡に居を移した理由。

 このGWに私からSに(多少)伝えようと思います。

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ダイナミック・ケイパビリティのフレームワーク: 資源ベース再構成の組織能力
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