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vol.7
2011年11月17日(木)
 

 「そもそも何が言いたいのか(何を主張したいのか)がよく分からない!」
 「主張したいことは分かるが、その根拠があまりに独断的である!」
 「想っていること、考えていることがあるなら、全てアウトプットしてください!」

 「これで、本番までにやるべきことは明らかになりましたか?!」

 先日、W社の次期幹部育成プログラムにおける経営層向け提言セッションの予行演習(経営層向
け提言プレゼンテーションのリハーサル)で私が受講者一人一人の予行演習に
対してフィードバック
した言葉の一部です。


 受講者のリハーサル自体は10分ほどで終了しますが、私からのフィードバックは、受講者との意
見交換、本番に向けて準備すべき事項の明確化等を含めると、受講者一人当
り平均1時間ほどの
時間を要します。


 適切なフィードバックには集中力の持続が求められます。1日で連続して7,8人にフィードバックす
る時などは疲労困憊します。
熱を帯びてくると博多弁やこのコラムには書けないような”荒っぽい言
葉”が飛び出したりします(^_^;;。

 「想っていること、考えていることがあるなら、アウトプットしてください!」

 ”経営層向け提言セッション”で、予行演習する受講者に私が頻繁にフィードバックする言葉です。


 アウトプットには大きな力(効果)が5つあると私は考えています。
 ※アウトプット:output。出力。「情報を―する」⇔インプット。[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

 1つ目の大きな力(効果)は、自分がアウトプットしたコト・モノを自分で確認することによって、自分
に何がインプットされているか、またそのインプットされているコト
・モノを”どの程度分かっている
か”を確認できる
ことです。

 
あるコト・モノがインプットされているからといって、インプットされているコト・モノを分かっているとは
限りません。
アウトプットしてみて初めて、インプットされているコト・モノを分かっている程度が分かり
ます。


 
例えば、「当事者意識が大事」という考え方を知っている(インプットされている)かといって、(その
本質や具体例等を)分かっているとは限らないのです。


 
「当事者意識が大事」というお題で10分間話せ(アウトプットせよ)という状況に立たされたと仮定
すると、「当事者意識とは一体何か?」「その意識がなぜ大事か(何の
役に立つ)?」「その意識はい
つも大事か(大事でない時はあるか)?」などの疑問に答える必要があることに気づきます。


 
そして、「ああ〜、私は当事者意識を分かっていなかった(知っているだけであった)」、あるいは
「私は当事者意識をよく分かっていた」と気づきます。


 

 2つ目の大きな力(効果)は、アウトプットを通じて論理力を鍛えられることです。

 アウトプットの目的に、アウトプットの対象者(自分がアウトプットする相手)にアウトプットを理解して
もらったり、納得してもらったりすることがあります。


 
このアウトプットの対象者に理解してもらったり、納得してもらったりする過程では、それなりの論理
構成やわかりやすさが必要となることが多々あります。


 
それなりの論理構成やわかりやすさを目指す過程で、論理力が鍛えられるのです。


 3つ目の大きな力(効果)は、アウトプットすればフィードバックを受けるチャンスが広がり、結果とし
て状況の正確な把握や状況対応力の向上に役立つ
ことです。

 
アウトプットすれば、望む、望まないにかかわらず、フィードバックする機会をアウトプット対象者に与
えることになります。


 
アウトプット対象者がアウトプットしたあなたに、あなたのアウトプットに関して何がしかフィードバック
したとしたら、あなたは、あなたのアウトプットが「アウトプット
対象者からどのように評価されている
か」「その場の状況に相応しい(適切な)ものであったか・否か」「自分の望む状況の実現に役だった
か・否か」などを判断する材料を
得たことになります。

 その材料をもとに、あなたは、「状況に”より適切に”対応するための次の一手」を考えることができ
ます。


 アウトプットしたことによってもたらされるフィードバックは状況の正確な把握や状況対応力の向上
に役立つのです。



 4つ目の大きな力(効果)は、「アウトプットのためにインプットを増やさざるをえない」という学習効果
です。


 アウトプットすれば「(大して)分かっていない」ことが分かる。

   ↓
 すると、単純に「分かりたい」と思う(知的好奇心)。

 あるいは「このままではアウトプット対象者の評価に耐えられない(×の評価をもらってしまう)」と切
羽詰まる。

   ↓
 分かるためには、あるいはアウトプット対象者の評価に耐えられるアウトプットとするためには、「現
在のインプットの量・質では足りない」と切実に思う・感じる。

   ↓
 よって、「インプットの量・質を増やしたい・高めたい」、すなわち「学習したい」と本気で思う・感じる。

 
「教えるためにはその数倍(何十倍?)勉強する必要がある」と聞いたことがあります。この考え方
は、倍数(数倍〜数十倍)はともかく、正しいですね。



 5つ目の大きな力(効果)は、あなたのアウトプットを通じて、アウトプット対象者はあなたについての
理解を深めることができる
ことです。


 「ジョハリの窓」理論のフレームワークを使えば、あなたのアウトプットは「他人に分かっている自
己」の領域を拡大することに役立ちます。さらに、「自分がアウトプット
したコト・モノを自分で確認する
ことによって、自分に何がインプットされているか、またそのインプットされているコト・モノを”どの程度
分かっているか”を確認できる
(アウトプットの1つ目の大きな力(効果)で既述)」というプロセスを経
て、あなたは「公開された自己」の領域を大きくできます。



 以上のアウトプットの大きな力(効果)を述べました。

 逆説的に述べれば、アウトプットを怠ることは次のような好ましくない結果・状況をもたらします。

 ●あなたは
「何が分かっているか・いないか、分かっている程度」を正確に把握できない。


 ●あなたの論理力は低下する。

 ●あなたの状況対応力は低下する。

 ●あなたの学習は滞る(発達できない)。

 ●他者はあなたを理解できない(あなたは他者から理解されない)。

 経営者、リーダー、マネジャーは、従業員、部下等にアウトプットさせなければなりません。
 従業員、部下等にアウトプットさせていない経営者、リーダー、マネジャーは、その重要な職責を果
たしていないと言わざるをえません。

 同時に、経営者、リーダー、マネジャーは、何よりにもまして、”自分自身”にアウトプットを課さねば
なりません。

 ”自分自身”にアウトプットを課していない経営者、リーダー、マネジャーは、重要な職責を果たして
いないことは言うまでもなく、さらに自己を発達させることから逃避し
ており、組織にとってお荷物(悪
い負債)になっているとまで言わざるをえないのかもしれません。

 

【補足その1】

アウトプットの力(効果)については、

コラム「vol.1 2011年10月15日(土) インターネットによる情報の発信 今なぜ?」
http://www.kkkiduki.jp/article/14157979.html

においても記載しています。

 

【補足その2】
 W社における次世代リーダープログラムは「次代の経営層(役員、取締役)候補者を対象とする次
期経営者育成プログラム」と「次代の部長・課長候補者を対象とする次期幹
部育成プログラム」の2
つのプログラムに分かれています。2つのプログラムの受講を通算すると計6年に及びます。


 
本コラム冒頭に記した「次期幹部育成プログラムにおける経営層向け提言セッション」の”次期幹
部育成プログラム”とは、この2つのプログラムの内の後者「次代の部長・
課長候補者を対象とする
次期幹部育成プログラム」に該当します。


 
”経営層向け提言セッション”では、現経営層を前にしてプログラム受講者が提言を行います。

 提言は、「組織に係わる課題に関する提言」と「自分自身の課題に関する提言」に分かれます。

 「組織に係わる課題に関する提言」では、組織の現状や課題、および課題解決の方向性・具体策
がその内容となります。

 「自分自身の課題に関する提言」では、自己の能力(
知識、スキル、態度等)や言動、目標などに関
する現状や課題、および課題解決の方向性・具体策がその内容となります。

著書

2023年4月発売 
ダイナミック・ケイパビリティのフレームワーク: 資源ベース再構成の組織能力
http://amazon.jp/dp/4502450316
発行所:中央経済社 
統合的な調査・分析の枠組みに基づき、グローバル・ニッチ・トップ企業のM&Aに係るダイナミック・ケイパビリティの実相を、ミドルマネジメントの観点から探究

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