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Vol.58 2013年11月23日(土)

 気分転換のため、大鳥居から、自転車をこぎ、産業道路、第一京浜を通って、浜離宮恩賜庭園に行ってみました。
 浜離宮恩賜庭園

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%9C%E9%9B%A2%E5%AE%AE%E6%81%A9%E8%B3%9C%E5%BA%AD%E5%9C%92

往復で約28km。迷って右往左往したり、興味がわいたら立ち寄ったり。実走行距離はおそらく30数km。所要
時間は計約6時間(食事、庭園散策の約1時間を含む)。さすがに疲れました。
庭園からはレインボーブリッジやお台場などの臨海副都心が一望できます。水上バス発着所からは諸外国の
方々が降りてきます。過去と今が交錯する不思議な風景です。庭園の基礎を築いた徳川綱重は、約350年後、庭
園がまさかこのような風景の中にあるとは夢にも思っていないでしょう。
庭園を散策しながら、先般仕事で甲府に10日ほど滞在した際に訪れた徳川と覇権を競った武田家の躑躅ヶ崎
館(つつじがさきやかた)を思い出しました。
 躑躅ヶ崎館

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BA%91%E8%BA%85%E3%83%B6%E5%B4%8E%E9%A4%A8
躑躅ヶ崎館は、私の感覚では、ひっそりと隠れるように”(ただそこに)ある”感じがして、それゆえ武田家の隆昌
がしのばれます。隆昌の跡は私の心をときめかせ、また哀切や郷愁も感じさせてくれます。

栄華を誇った豪邸のあたりも、いつしか無人の野原と変わり、昔のままの住居も、実は住人がまったくの別人に
変わっている。桃や李は、昔のままに花を咲かせるけれども、人間の言葉を話せないから、結局、昔を語り合う相
手はいないことになってしまう。まして、見たこともない遠い昔の貴人の御殿の跡は、いっそう強く無常を感じさせる。
 角川書店(編)(2002)『徒然草』角川学芸出版 pp.60

  今夏初盆であった妻の母(私の義母)が妻のために作ってくれた着物を、妻は、形見分け分を残し、他は遺品整
理のプロにお願いして整理してもらうことを決めたようです。妻がその胸の内を話してくれました。
 遺品整理
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BA%91%E8%BA%85%E3%83%B6%E5%B4%8E%E9%A4%A8
過去のものやことを大事にしたり、活かしたりすることよりも、それらとあえて訣別し、新たなものやことを創った
り、チャレンジする。そんな生き方を、妻は模索しているようです。なんとなく妻の気持ちは分かります。

(新しいものやこと以上に)過去のものやことに執着することは生活の質を低下させてしまうことも多い気がしま
す。過去のものやことは新しいものやことよりも機能面で劣り(非効率で)、使い勝手が悪かったり、存在しなく(無
く)なってしまったりすることすらあるからです。かつてのオートマチック車しかり、オープンリールデッキしかりです。
こだわりやノスタルジー、もの思いにふけることは否定しません。いえむしろ私は大好きです。しかし、時代は
刻々と変化しています。生活の質を維持・向上させるためには、精神衛生上からも、過去のものやことではなく、新
たなものやことを積極的にとり込み、創っていくことは有効であるように私は思います。

 未来にふさわしいものを好きになればいいのである。私の予測が示す通り、未来の生活はこれまでの生活とは
だいぶ違ったものになる。行動を起こさなければ、あなたの好みは過去の生活で培われたものになり、結果とし
て、未来の生活はあなたの好みに合わないだろう。
 ヨンゲン・ランダース、野中香方子(訳)(2013)『2052 今後40年のグローバル予測』日経BP社 pp.433-434

あらためて言うまでもなく、環境変化は組織や個人の知識やスキル等の強みを弱体化させる力を秘めています
(強みは環境変化によって強みではなくなる。いやむしろ弱みになってしまう)。
古いものやことへの執着は環境変化を構成する「古いものやこと」と「新たなものやこと」の後者(新たなものやこ
と)の軽視に繋がりやすく、つまり古いものやことへの執着は、環境変化の構成する2つの要素の一つを、ひいて
は環境変化そのものを軽視する危険性を高めます。
環境変化を軽視する危険性を高める古いものやことへの執着は、環境変化が引き起こす組織や個人の強みの
弱体化を見過ごしてしまう恐れを増大させます。

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環境変化が激しささを増す昨今、過去のものやことではなく新たなものやことに目を向けることは、強みの弱体化に気づき、新たな強みを継続的に創り出していく、そして強みを維持する上で極めて重要です。

過去のものやことと訣別する力を訣別力、あるいは訣別コンピテンシーと言うとしたら、訣別力こそ、訣別コンピテ
ンシーこそ、これからの組織やビジネスマンが時代を生き抜いていく上で最も重要な能力、コンピテンシーの一つ
であるのかもしれません。

もちろん、過去のものやことすべてを否定しているわけではありません。

 創業期の活気をよみがえらせるには、「無法者英雄」が必要であり、創業の精神を見失わぬためには「羅針盤英
雄」を置いておくことである。あるいは、創業時に苦労した人を、役に立たなくなってからも、「御神木英雄」として残
しておくことである。
 城山三郎(1989)『打たれ強く生きる』新潮社 pp.61

過去のものやことと訣別すること(新しいものやことに目を向ける、チャレンジすること)を強く志向すべき時代が
今まさに訪れているように感じます。微力な私にでもできることには、「過去のものやことと訣別する姿勢や覚悟を
後進(後輩、後に続く方、子供)に示していく」もあるように思います。

 秋の一日。良い気分転換ができました。

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