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vol.5
2011年11月13日(日)
 

 背景については割愛しますが、「研修の効果について評価したい。どうしたらいいでしょうか?」とい
う類の問い合わせ・相談が増えています。


 大前提として明確にしておきます。

 研修の効果を評価することは極めて重要です。必要です。
 例えば、「今回の研修は良かった・・・」「あの研修は悪かった・・・」と。

 その主たる理由は次の通りです。

 ・研修の企画・実施にあたっては費用が発生する。よって、費用対効果を説明する責任、説明に努
  める態度・姿勢が研修企画・実施部門(者)、教育ベンダーには求められる(求められて当然であ
  る)。
 ・PDCAを回す必要がある。 ※この理由についての記載は省略します。
 
 研修の効果を評価することは重要です。必要です。
  その理由は上記のように、いたってシンプルです。


 研修効果を評価することの重要性・必要性を大前提に、研修企画・実施部門(者)、教育ベンダー
はその研究・実践に努める必要があります。

 

 研修効果の評価を研究・実践する際に重々留意すべき事柄があります。

 研修効果の評価に関してわきまえておく限界がある、と言ってもいいでしょう。

 特に、研修効果の評価へ”熱心に”取り組む組織・人には、評価すること自体が目的化したり、そも
そもの人を育成するという目的を見失ったりするケースが散見されがちです。特に、注意が必要です
ね。


 研修効果の評価を研究・実践する際に重々留意すべき事柄(認識すべき「研修効果の評価の限界」)とは以下のようなものです。

評価のためには測定が前提となる。また測定と評価は異なる概念である。
  
測定とは、「ある単位を基準にはかる」こと→はかるための尺度やスケールが必要。
  
評価とは、「(測定値に基づき)善悪・優劣などの価値を判じ定める」こと→価値基準が必要。

●アンケートやヒアリングで研修を評価する材料を収集する際、回答する受講者の解釈力や回答さ
 せる側のワーディング(言葉づかい、言い回し)等により、そもそも研修の効果を正確に測定するこ
 とが難しい・・・。
  「測定したいことが測定できているか?」
  「回答者によって評価が大きく異なる?」

●測定の正確性の課題に加え、「測定値をどのように評価するか」「評価者による評価のばらつき
 どのようにして一定範囲に抑えるか」という課題がある。
  「今年実施した研修における受講者満足の点数は、昨年のそれと比較して、5点満点中、0.5ポ
  イント上がった。さて、今年の研修の方が昨年の研修よりも良くなった(と評価できるか)?」

●定性的な情報の中には「数字(定量的情報)では表せない的を射ている情報」も多々ある。しかし、
 定性的情報の測定・評価は(定量的情報にもまして)困難さを伴う。

研修効果に影響を与える要因の特定が難しい(ことが多々ある)。
  「研修受講による効果なのか?」
  「それとも研修受講以外の何かによる効果なのか?」。

●(以上のことから、)研修効果の評価・測定は思いのほか難しいものである。恣意的に測定・評価し
 ようと思えば(いくらでも)可能である。

受講者の行動の変化(カークパトリックのレベル3)、組織の成果・業績への影響・貢献(同レベル
 4)」を研修効果の測定・評価の対象にする場合、一般にコストが大きくなる
  「(コストパーフォーマンの点で、)行動変化や組織の成果・業績への影響まで測定・評価の対象
  にする必要があるか?」

●測定・評価は、基本的には短期的なスパンでに実施する(実施せざるを得ない)が、中長期に育成
 すべき能力は、短期的なスパンで実施する測定・評価には馴染まない

●「測定・評価が困難・不可であるなら研修を検討・実施しない(するな)」の類の発想を有する方々も 存在する。


 組織・企業は様々なニーズを有し、また取り巻く環境等は一様ではありません。

 おのずと、研修効果の評価を必要とする目的・意図も組織・企業によってそれぞれです。

 研修効果の評価にあたっては、評価する目的・意図を踏まえ(何のために評価が必要であるかを明らかにした) 上で、上記の「研修効果の評価を研究・実践する際に重々留意すべき事柄」「研修
効果の評
価に関する限界」を重々に意識し、御社・組織にとって”適切”な方法で研修の効果を評価する必要があります。

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